安全を解析する仮想人体モデル、自動運転時代の乗員姿勢に対応

ダミー人形を使った衝突安全試験の映像は多くの人が、テレビ番組などで見たことがあるだろう。乗員の傷害度合いを測るために用いられるそれは人間と同等の重さや重心、骨格の中にはウレタン製の内蔵もどきを有しているものの、生身の体とはかなり違う。

人形を用いた衝突安全実験では、衝突による脳や内臓などの各部位の損傷を詳細に分析することは難しいという。トヨタは、豊田中央研究所と共同で研究開発した人体有限要素モデル「THUMS(サムス)」を用いて、'00年からコンピューター上で車両衝突時の傷害解析を実施している。骨のモデル化から始まったそれは顔面・脳・内臓の各精密モデル、体格別、全身の筋肉、子どもモデルの追加を経て今月8日、改良版が発表された。

自動車技術会「日本の自動車技術330選」でも紹介されているサムス――バーチャル人体モデルの新版「THUMS Version 6」は、詳細な内臓モデルに加え、乗員の身構え状態やリラックス状態など様々な筋力状態を模擬可能な筋肉モデルを持ち合わせていて、自動運転車両などの普及による将来の乗員姿勢の多様化を想定した、より精度の高い解析が可能になっているという。

衝突前の乗員姿勢変化と衝突時の傷害解析を同時に高い精度で実施可能となり、そのしくみの切り替え作業が不要となるため作業効率の向上にもつながる。THUMSは、JSOLおよび日本イーエスアイを通じて販売されていて、これまでトヨタのみならず国内外の自動車メーカーや部品メーカー、さらには大学や研究機関など多くの施設でクルマの安全技術研究に使用されてきた。

そして今回の改良により、安全技術研究へのさらなる貢献が期待されるという。トヨタは、今後もTHUMSを活用しながら予防安全技術や自動運転技術等の開発に加え、万が一衝突した場合でも乗員を守る技術の研究開発にも取り組み、あらゆる瞬間で顧客に安全・安心を提供していく構えだ。