ADHD患者の自閉スペクトラム症の併発有無を早期判断する基礎技術を開発

日立製作所、自治医科大学、国際医療福祉大学、中央大学は、神経発達症である注意欠如・多動症(ADHD)患者が自閉スペクトラム症(ASD)を併発しているかどうかの早期診断を支援するための基礎技術を開発した。光トポグラフィーを用い、患者負担の少ないADHDの治療を目指す。

ADHDやASDは、長期間続くと不登校やひきこもりのほか、うつ病などにつながることもあるとされている。近年、ADHDとASDの両方の特徴を持つ患者が少なくないことが報告され、両症状の併発の有無に合わせて診断することが必要になっている。しかし、併発有無を見極めるには数カ月にわたる経過観察が必要なため、治療法や療育法の決定に時間がかかり、患者や家族の負担になっていた。

この課題解決に向けて、2018年3月に、自治医科大学を中心とした研究により、服薬経験がないADHD患者の治療薬服用前後の脳活動パターンを用いて、ASD併発の有無による病態の違いを可視化できることが明らかになった。今回、この知見をもとに、ADHD患者がASDを併発しているかを自動的に解析するアルゴリズムを開発した。

本技術は、ADHD患者が初めて治療薬を服薬した時の脳反応を光トポグラフィーで計測してASD併発の有無を自動解析するもの。

研究グループでは、技術の効果を確認するために、クロスバリデーションの手法を用いて、数カ月後の診断結果に対する予測正確度を検証した。その結果、その正確度は約82%となり、診断支援技術として実用できる可能性が示された。

これまで、家族などへの問診から医師が長時間をかけていた診断が、客観的な指標を診断に加えることで、早期に治療・療育方針を決定し、家族の患者に対する接し方にもアドバイスできることが期待されるという。

今後、日立、自治医科大学、国際医療福祉大学、中央大学は、臨床研究を通じてこの技術の開発を進め、神経発達症患者に対して健やかな発達を支援できる社会の実現を目指す。