振り込め詐欺などの不正送金、プライバシー保護AIにて自動検知する

多くの金融機関では現在、それぞれ人手によるデータ解析を行っている。振り込め詐欺、架空の商品取引やギャンブル必勝法伝授などといった特殊詐欺による不正送金を検知するほか、決済、融資、保険、マーケティングなどの分野で各種ロジックを用いた分析を行っている。

複数機関でのデータ統合解析は限定的であり、個々にそれを行っているためにコストと精度に課題がある。複数の組織が持つビッグデータの統合、組織横断的なデータ収集・処理・学習・制御により、様々な社会問題が解決できると期待されている。が、そこでもプライバシーの保護やデータ機密性の確保が課題となり、これらは複数組織間でのデータ流通を阻む壁になっているという。

NICT神戸大学エルテス社は、JST CREST「人工知能」研究領域にて、データの利活用とプライバシー保護を両立できるプライバシー保護データマイニング・解析技術の研究開発と実用性検証に取り組み、千葉銀行等の協力を得て、不正送金の検知実験を行ってきた。そして今回、その自動検知精度の更なる向上をめざし、より多くの金融機関と連携した実証実験を行うため、これに参加してもらえる金融機関を募集する。

上記データマイニング研究を行うNICTセキュリティ基盤研究室では、複数の組織内で学習した結果を暗号化して中央サーバに集め、中央サーバで暗号化したまま学習結果を更新できるプライバシー保護深層学習技術「DeepProtect」を開発。IEEEジャーナルに掲載された同技術により、各組織の所有データを外部に非開示のまま、複数組織の連携による膨大なデータを基にした学習が可能になるという。

3者は、個人情報を保護しつつ機械学習アルゴリズムを活用して異常・不正検知を行う、上記解析技術を用いることで、複数の金融機関からのデータ統合解析及び自動化を実現し、調査コストの削減、調査精度の向上、属人化の回避につなげていく構えだ。