住信SBIネット銀行と日立は、約2年に渡り人工知能を活用した先進的審査手法の開発をテーマとする実証実験を重ねてきた。金融ビジネスでは、債務の不履行など発生頻度が低い事象を、より高精度に予測していくことが求められる。しかし、従来のディープラーニングでは、データの発生頻度が低いと「ノイズ」に左右されやすく過学習を引き起こす傾向があることや、予測式が複雑であるため予測根拠が「ブラックボックス化」することが開発の課題だったという。
実証実験を重ねて開発した日立のAT/PRCは、稀な事象の発生を予測することを特徴とし、日立独自の「シグナルノイズ学習」により過学習を抑制し、予測根拠を定量的に提示する「影響度算出技術」を用い、予測根拠を説明しやすくすることで、この2つの課題の解決を図っている。
日立によると、AT/PRCは、稀な事象の予測や予測根拠の説明が求められる業務に適していることから、株式の不公正取引審査や新規取引顧客の評価、信用度調査など、企業が取り組む様々なリスク管理業務での適用が期待できるという。
今後、合弁会社の設立に向けて、両社で具体的な協議を行っていく予定。AI審査サービスの第1弾として、地域金融機関をはじめとする複数の金融機関に対し、地域創生に向けたサポートや業務効率化ツールである住宅ローンのAI審査サービスを2019年10月から提供することを目指す。
同サービスにより、大量のデータに基づくより精緻な審査が可能となり、より多くのユーザーの融資の要望に応えることに加えて信用コストの削減が期待できるという。
今後は、資金決済情報などに基づいて先進的な審査をサポートするトランザクションレンディングや、多重債務防止の観点からより精緻な審査が求められるカードローンなど、AI審査サービスの適用分野を順次拡大していく。