ミドリムシが産む油脂の臭いを抑え、バイオ燃料の生産効率アップへ

化石由来の燃料を大量消費するしくみによって発展してきた現代の人間社会。その反省と、地球温暖化対策の緊急性から、賢明な世界諸国はクリーンで持続可能な資源を活用する社会の構築に向けて舵を切り、たとえばバイオ燃料で航空機を飛ばす取り組みなどを進めている。

食品とならびバイオ燃料にもなる、単細胞生物「ミドリムシ」は豊富な栄養素を含むことと同時に、特定条件下で油脂を高い割合で蓄積することが知られている。周囲に酸素がない条件で細胞内に蓄積したパラミロン(食品機能性を示す結晶型β-1,3-グルカン顆粒)を分解してエネルギーを獲得し、その反応における不要なものを油脂ワックスエステル(鎖脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル結合生成物)の形で蓄積している。

炭素に注目した上記細胞内の反応の流れは従来研究で明らかであった一方、油脂が蓄積する際、硫黄化合物の臭いがミドリムシから発生することが経験的に知られていたものの、この現象については深く追究されたことがなかったという。ユーグレナ理化学研究所筑波大学の研究チームは、ミドリムシ(学名:微細藻類ユーグレナ)の油脂生産時における硫黄化合物の代謝変化の実態を解明した。

臭い発生機構の研究により、ワックスエステル発酵について一層深く知り、バイオ燃料の生産性を上げる技術開発につなげることをめざす。同チームは、サンプル中の硫黄化合物を網羅的に解析できる技術サルファーインデックスを活用することで、発生する臭いの主成分が硫化水素であることを突き止めた。さらにその発生原因がミドリムシ細胞内のタンパク質およびグルタチオン(トリペプチド)の分解に由来することを明らかにした。

ミドリムシの油脂生産性アップや臭いの発生を抑える技術の開発が可能となり、高効率バイオ燃料研究などを加速させると期待される。今回の研究成果は、英国科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。