放射線耐性が高い半導体チップの宇宙空間での実証実験

日本電気(NEC)は、放射線耐性の高い半導体チップ「NanoBridge-FPGA(NB-FPGA)」を開発し、宇宙空間での動作の信頼性に関する実証実験を実施する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)がイプシロンロケット4号機で打ち上げた革新的衛星技術実証1号機の中の小型衛星「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」に搭載する。


実証実験では、放射線が非常に強い宇宙環境下でのエラー率計測などのNB-FPGAの基礎的なデータ蓄積・評価を行う。さらに画像データの圧縮などの動作を通じてNB-FPGAの機能が正常に働くかなどを検証する。

NB-FPGAは、日本独自の動作原理(原子スイッチ)に基づくFPGA。書き換え可能でありながら回路構成情報を保存するメモリが不要なため、放射線の影響で回路構成情報が書き換わってしまうソフトエラーの発生確率が極めて小さく、信頼性が高いという。また、現在の最先端FPGAと比較して消費電力を10分の1、チップサイズを3分の1に抑えられ、低消費電力と小型化の両立が可能だ。

今回、JAXAが開発したカメラモジュールにNB-FPGAを実装しRAPIS-1に搭載。ソフトエラーの評価回路を一定期間動作させ、正常な動作完了を知らせる信号が評価期間中に継続出力されることを確認する。また、衛星の太陽電池パネルの開閉前後の画像と衛星から地球を撮影した画像をNB-FPGAに書き込まれた画像圧縮回路で圧縮し、その圧縮データが地上へ正常に送信されることを確認する。実証は打ち上げ後、1年間の中で行う予定だ。

今後、NECは今回の実証で得られた結果を検証し、NB-FPGAのさらなる性能向上を目指し、早期事業化を推進。人工衛星機器に加え、高い信頼性が要求される自動車、医療分野への展開を進めるとともに、IoT機器の高度化および省エネルギー化、IoT機器産業の発展に貢献していきたい考え。