複数の精神疾患における記憶力を共通のモデルで予測することに成功

高橋英彦 医学研究科准教授、吉原雄二郎 同特定助教、山下真寛 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所研究員、川人光男 同所長らの研究グループは、ATR脳情報通信総合研究所が開発した個人の作業記憶力を予測する機械学習アルゴリズムを用いて、統合失調症など様々な精神疾患患者が安静にしているときの脳活動から、作業記憶力を予測した。


統合失調症やうつ病を含む複数の精神疾患では共通して、情報を一時的に記憶して操作する能力(作業記憶)が低下することが知られている。このような複数の疾患に共通する認知機能低下の原因に関して、精神疾患ごとに個別に存在するという説もあれば、疾患に共通した原因があるという説もあった。

研究グループは、過去に機械学習の手法を用い、健常者の安静時の脳領域間の繋がり方から、作業記憶力の個人差を予測するモデルを作成。研究では、そのモデルを用いて統合失調症患者の作業記憶低下の個人差を予測するだけでなく、統合失調症、大うつ病、強迫症、自閉スペクトラム症の4つの精神疾患における集団レベルの作業記憶力を予測しうることを示した。

この結果は、健常者における脳領域の繋がり方と作業記憶力の対応関係が、複数の精神疾患に共通して存在することを示している。今回の研究で開発した手法は、作業記憶力の低下など、疾患横断的な症状の背景に、どのような脳領域間の繋がり方のパターンがあるかを調べる方法として有効と考えられ、このような研究が進むことで深刻な症状を改善する治療方法につながることが期待される。

研究成果は、2019年1月8日に国際学術誌『eLife』のオンライン版に掲載された。