統計データのまとめやグラフは平成30年「我が国の人口動態」(厚労省ウェブサイトPDF)で確認できる――。日本人の2人に1人が一生涯のうちに体験する病気が"がん"だと日本癌医療学会はCANCER e-Learningサイトでいう。がん医学において、遺伝的研究が進み、何百もの遺伝子が、がんの発病・進行に関係していることや、遺伝子発現パターンは個人によって異なることがわかっている。
そのため、抗がん剤を汎用的に投与する治療法ではなく、多数ある抗がん剤の中から個人に最適な治療薬を選択して投与するプレシジョン・メディスンの検討が進められている。ゆくゆくは患者からがん細胞を採取し、遺伝子情報や環境、生活様式などから複合的に最適な治療方法を選択できるようにすべく、研究も進められているという。
オリンパスは、個人最適な医療を提供するプレシジョン・メディスンの実現に向けて、最先端の科学技術と国際経済の中核を成す世界有数の私立大学である南カリフォルニア大学(USC)とパートナーシップを結び、がんの予防・診断・治療に関する共同研究を'17年3月より開始。そして今回、共同研究の第1フェーズとして、大腸がん患者から作成した細胞モデルを3次元解析することに成功した。
研究開発ベクトルの一致をみた、がん治療、予防手法の橋渡し(基礎研究の成果を実用技術として確立する)研究を行うローレンス J.エリソン研究室と、生物学分野においてイメージングによる研究を専門に行う研究センタ(TIC)との連携により実現したパートナーシップのもと、共焦点レーザー走査型顕微鏡「FLUOVIEW FV3000」や3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」(米国のみで販売)を提供し、USCが取り組むがんの予防・診断・治療に関する研究課題をイメージング技術により解決するという。
患者由来の細胞モデルを3次元化して用いることで、2次元培養した細胞を使う薬効試験と比較し、抗がん剤の生体内作用をヒトの体内に近い状態で再現でき、より正確な薬効評価が可能となる。3次元細胞解析など高レベルの解析技術で、がん患者の細胞で起こる複雑な生体内作用を解析して、高密度な情報を提供することで研究をサポートする。
オリンパスとUSCのパートナーシップは今後、第2フェーズに移行し、多数の患者由来の3次元細胞モデルから多面的にデータを取得し、抗がん剤を評価する有効な手法の確立を図る。将来的には、がん治療の過程で患者から検体を取得・分析し、個人最適な治療薬や治療方針を決定するプロセスの確立を目指す構えだ。