慶應義塾大学は、乾燥させても死なず、水を与えることで細胞分裂が再開する「Pv11細胞」の乾燥耐性という不思議な現象に着目し、トランスクリプトーム解析を通して、このメカニズムに関与する遺伝子の推定を行い、その結果を発表した。
慶應義塾大学理工学部生命情報学科の山田貴大助教と舟橋啓准教授、カザン大学の Ruslan Deviatiiarov 博士、Alexander Nesmelov 博士、理化学研究所の Oleg Gusev ユニットリーダー、山陽小野田市立山口東京理科大学の広井賀子教授、および農研機構の末次克行主任研究員、Richard Cornette上級研究員、黄川田隆洋上級研究員らのグループが実施。
具体的には、常温で乾燥しても増殖能力を維持したまま保存が可能なネムリユスリカの胚由来培養細胞である「Pv11」細胞のトランスクリプトーム解析を行い、このメカニズムに寄与しうる遺伝子を推定。
Pv11細胞が乾燥耐性を誘導するために必要なトレハロース処理によって、乾燥時に発生する生体にとって有害となる活性酸素の影響を除去するチオレドキシンなどの抗酸化因子が高発現することを明らかにした。さらに、一旦乾燥したPv11細胞を再水和させたときには、深刻なDNAの障害を修復する遺伝子が高発現することを明らかにした。
これらの成果から、推定した遺伝子群を、乾燥耐性を持たない別の生物に遺伝子導入することで、乾燥しても死なない新たな生物の創生が期待されるという。
研究成果は学術雑誌『Scientific Reports』への掲載に先立ち、同誌Webサイトにてオンライン速報版が公開された。