大きな自然災害が続く昨今、社会インフラの見直し気運が高まっている。現代社会の血流ともいえる電力については、再生可能エネルギー資源の活用とともに、大規模電源集中型発電所から、小さな電源を分散配置して統合管理するバーチャルパワープラント(VPP)が注目されている。
経産省資源エネルギー庁ウェブサイトにおいても、省エネ・新エネルギーシステムとしてVPP・デマンドレスポンス(DR)が紹介されている。今月17日、東芝エネルギーシステムズは、来年元日からIoT(モノのインターネット)を用いて複数の蓄電池を最適に制御するVPP運用サービスを開始――東京電力EPと横浜市内に設置する蓄電池の運用に関する業務委託契約を締結したと発表した。
電力を安定供給するためには、需要と供給を常に一致させる必要があり、これまでは火力発電所などの大型電源がその機能を担っていた。一方、VPPは、天候に左右される太陽光発電、据置型蓄電池や電気自動車、水素など地域に散在する複数の発電・蓄電設備を束ねてIoTにより制御し、一つの発電所のような機能を持たせることで電力網の需給バランスを最適化する。
そこで今回、同社は上記契約の下、横浜市内11の小学校に設置された約15kWhの蓄電池を対象に、非常時に必要な電力を確保しながら、電力系統および蓄電池の状況に応じて、ピークカットやDRを効率的に運用するための蓄電池群制御を行う。これにより、対象校では防災性を高める非常時電力を備えた上で、需給バランス最適化に寄与する調整力としても蓄電池を活用することが可能になる。
蓄電池には、より高い安全性、長寿命といった特長を有する東芝グループ製リチウムイオン二次電池「SCiB™」が採用されるという。同社は、'21年に開設が予定されている日本国内の需給調整市場に向け、より多種多様な分散電源の組み合わせに対応可能なシステムの開発を進めていく構えだ。