近年、人口減少や高齢化が進む中で農業分野と福祉分野が連携した「農福連携(ユニバーサル農業)」が注目されている。障がい者や高齢者の社会参画を進め、その効用を農業経営の改善や担い手の育成に活かす取り組みだ。様々な工程がある一連の農作業を「工程分解」し、誰にでも作業ができる形に切り分けることで、農作業の効率化と障がい者の仕事の創出につなげる。
ひなりでは、障がいのある従業員がサポートマネージャーとともにチームで連携農家の業務を行う。業務を請け負う際にはサポートマネージャーが農家とともに工程分解を行い、作業に必要な補助具などとともに作業手順書を準備する。品質管理や衛生管理、安全管理を含めて業務管理を行うこの形態は「ひなりモデル」と言われ、連携農家の業容拡大に貢献しているという。
京丸園は浜松市で、あいがも農法のお米や水耕みつば・ねぎ、ちんげん菜などを育てる生産農家。浜松での農福連携の先駆けとして1997年から障がい者雇用を始め、現在はユニバーサル農園として障がい者24人を雇用している。
実証実験では、環境センサーデバイスを圃場に設置し、リアルタイムに圃場の状態をモニタリングし、あらかじめ設定した環境センサーの異常値を検知するとタブレット端末やスマートフォンにアラートを通知する。圃場内にデジタルサイネージを設置し、圃場のカメラ映像と環境センサーで収集したデータを見える化。気象状況などとあわせて農作業者が作物の栽培に関して積極的な意見交換ができる状況を整備し農業の働き方改革につなげる。さらに、圃場から収集した画像と環境センサーのデータを蓄積し、AIを活用して野菜の育成に最適な環境を分析・推論を行う。
今回、姫みつばを栽培するビニールハウスにカメラ1台と環境センサー(日射量・温湿度・水温の測定)を設置し、栽培過程のデータからAIで葉やけの発生原因や成長状態を分析。分析結果をもとに、ビニールハウスの環境を維持していくことで、将来的に農作業の効率化と障がい者の仕事の創出につなげる。