早稲田大と富士通研究所、空港混雑の原因を自動分析して緩和対策を提案

富士通研究所と早稲田大学 理工学術院高橋真吾教授は、人間行動シミュレーションの結果から混雑につながる原因を自動で分析する技術を開発した。空港全体の混雑原因を数分で発見でき、有効な緩和施策を提案する。


イベント会場や空港、ショッピングモールなど、多くの人が集まる場では、しばしば混雑による顧客満足度や売上の低下が問題となる。現状では、入退場や支払いなどへの設備・対応人員の増強以外に、案内板の設置やクーポン配布による空いている場所や時間に誘導する方法などで混雑の緩和を図っている。しかし、より効果的な対策を行うためには、どのような属性の人々がどのような情報を認知し、どのような行動をとるかを知り、効果的な混雑緩和の手法を採ることが重要だ。

現在、多様な人々の属性や認知、行動を表現したエージェントモデルを構築し、計算機上で混雑状況を仮想的に模擬することで、混雑が生じる原因の分析と施策の評価を行う「人間行動シミュレーション」が注目されている。これまで富士通研究所、富士通は、国内外で16件の特許出願を行うなど、精緻なシミュレーションを可能にするエージェントのモデルに関する研究を進めてきた。また、早稲田大学高橋研究室では、組織システム、消費者行動、企業戦略など、様々な社会システムの課題解決のためのエージェントベースシミュレーションを開発してきた。

人間行動シミュレーションでは、数千以上のエージェントが、それぞれ年齢、性別、来場目的などの多くの属性を持ち、案内板などから経路や混雑の情報を認知しながら目的地と経路を選択、移動するといった行動を取ることで、多様な混雑を生み出す。

従来は、専門家がシミュレーションによる大量のデータを分析し、知見やノウハウに基づいた混雑原因と対策の仮説を立て、再度シミュレーションにかけて検証するという試行を繰り返していた。そのため、原因を分析して施策を決定するまで数カ月かかり、原因の見落としにより有効な施策を見つけられないといった問題が起きている。

今回、研究グループでは、人間行動シミュレーションから、混雑に関係するエージェントの特徴を、網羅的に自動分析する混雑原因発見技術を開発した。

空港の混雑緩和施策分析を目的として2015年に開発した人間行動シミュレーションにこの技術を適用し、効果を検証。その結果、専門家の分析と比較して、約4倍の混雑原因を発見できた。例えば、保安検査の混雑分析では、旅客が特定のチェックインカウンターで滞留することに起因して保安検査の突発的な混雑が生じることを新たに発見した。

この技術により発見された混雑原因に基づき施策を導出したところ、専門家分析の結果から導出した施策に比べて、保安検査の待ち人数を6分の1に削減し、施策実施に必要な人員数を3分の2に抑える効果があることをシミュレーション上で確認した。また、分析時間も数カ月から数分へと大幅に短縮できたという。