国内IoTセキュリティ製品市場は、2022年には1,221億円に倍増

IDC Japanは、国内IoT(Internet of Things)セキュリティ製品市場の2018年~2022年の予測を発表した。同市場は、2017年の市場規模は前年比20.5%増の624億円となり、2017年~2022年の年間平均成長率が14.4%になると予測している。


IDCでは、IoTを「IP接続による通信を、人の介在なしにローカルまたはグローバルに行うことができる識別可能なエッジデバイスからなるネットワークであり、法人/政府/個人といった様々なユーザーが利用するユビキタスなネットワーク環境に対して、管理/監視/分析といった多様な付加価値を提供するものである」と定義している。

IoTセキュリティ製品市場は、IoT環境へのセキュリティ製品市場で、デバイス/センサーセキュリティとネットワーク/エッジセキュリティ、セキュリティアナリティクス/イネーブルインフラストラクチャ、IoT物理セキュリティ/セーフティの4つの機能セグメントに分類し、市場規模算出/市場予測を行っている。

それによると、国内IoTセキュリティ製品市場は、2017年の市場規模は前年比20.5%増の624億円となり、2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR)が14.4%で、2022年には1,221億円と2017年の2倍ほどに拡大するとIDCでは予測している。

4つの機能セグメントの中で最も構成比が高いIoT物理セキュリティ/セーフティ市場は、監視システム、温度センサー、侵入検知デバイスなどの特定の物理的および環境的保護制御を監視および維持するように設計された様々なソリューションや、公共安全、制御システムを監視およびサポートするように設計された交通管制システムなどスマートシティへのセキュリティソリューションが含まれる。第4次産業革命によるスマートシティの構築が進むことから、同市場の2017年~2022年のCAGRが13.5%で、市場規模は2017年の437億円から、2022年には825億円になると予測する。

また、省スペースの低消費電力デバイスで動作するように設計されたマルウェア対策製品を含むデバイス/センサーセキュリティ市場は、IoTセキュリティの中で重要な要素であり、ITセキュリティと同様に導入が進むとみている。2017年~2022年のCAGRが17.0%と、4つの機能セグメントでは最も高く、市場規模は2017年の84億円から2022年には183億円に拡大すると予測する。

IoTデバイスおよび産業用制御システム環境の関連インフラストラクチャのネットワークセグメンテーションやモニタリングを行う製品を含むネットワーク/エッジセキュリティ市場は、第4次産業革命によるスマート工場の構築が進むことから、工場内の監視システム(SCADA)や分散制御システム(DCS)、PLCなどの産業用制御システムに対する可視化へのニーズが高まり、2017年~2022年のCAGRが16.4%で、市場規模は2017年の45億円から2022年には96億円に拡大すると予測している。

2017年5月に世界的規模で猛威を振るったランサムウェア「WannaCry」では、PCだけでなく医療機器や、自動車工場などの産業システムにも感染した。また2018年に入り、日本全国でインターネットに接続された監視カメラがハッキングされる事件や、インターネットに接続するルーターへの不正アクセス事件が相次いで発生している。

IoTデバイスが急速に増加している中、IoTデバイスのセキュリティ被害が顕在化することで、セキュリティ脅威への危機感が高まり、IoTデバイスへのセキュリティ対策が促進されるとIDCではみている。

企業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって、ITばかりでなくOT(Operational Technology)に対するセキュリティ対策も求められる。また、IoTデバイスでのセキュリティ被害も顕在化。重要インフラ分野の業種では、2020年の東京オリンピック/パラリンピックでのサイバー攻撃に備え、OTへのセキュリティ対策も差し迫っている。「セキュリティ製品サプライヤーは、ユーザー企業にOTに対するセキュリティリスクを認識させ、OTへのセキュリティ製品の導入を促進させるべきであるとIDCは考える。そのためには、OT向けのセキュリティリスクアセスメントサービスの展開や、POC(Proof of Concept)の実施などによって、セキュリティリスクの認識度を向上させることが必要である」と、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーである登坂 恒夫氏はコメントしている。