iPS創薬・再生医療、ITによる効率化に向けて

初期の胚を培養することにより様々な組織の細胞に分化する能力を有する胚性幹(ES)細胞、そして'06年に京都大学の山中教授グループが誕生させた多能性細胞(iPS細胞)は、難病治療や再生医療、新しい薬の開発などでの活用が大いに期待されている。


ライフサイエンス分野は、ゲノム、細胞、生体等からの大量データ取得技術の進歩、さらにはES細胞やiPS細胞といったテクノロジーの登場により、創薬、医療、ヘルスケアにおけるさまざまな課題を解決する手段が出てきている。特にiPS細胞は、従来開発が困難だった難病の治療薬の発見に寄与するなど、再生医療だけでなく創薬研究の分野でも大きな成果を上げ始めている。

一方で、IT(情報技術)分野ではIoTやAIによる巨大で複雑なデータの収集や分析・洞察技術が大きく前進――。複数データ間の関係性を見出せるようになり、あらゆる分野でそのデータや技術と組み合わせて新しいビジネスが創発されつつあるという。NTTデータは、京都を本拠地としてiPSテクノロジーの事業化を推進するiPSポータル社の第三者割当による株式を取得。11月7日に資本業務提携で合意した。

NTTデータは創薬・ヘルスケア分野での豊富なデータ活用実績があり、IoTやAI、アナリティクスを活用した技術も有している。また、iPSポータルは国内で唯一の商業利用を目的とした血液からのiPS細胞生成ができる企業であり、大学、製薬企業、機器メーカーなどとともに、創薬開発、再生医療を効率的に進めるためのプラットフォームを提供することにより、創薬・再生医療分野の発展に貢献している。

両社は今後、創薬研究や再生医療研究のライフサイエンス分野でのAI・IoT技術を活用した新たな価値提供、iPS細胞を活用した研究に関するさまざまな課題の解決、ひいてはライフサイエンス分野全体の発展に寄与するプラットフォームの開発を目指していくという。