香川県のインクルーシブ教育をVRやICTで支援、SDG4実現へ

人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とする。障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みを「インクルーシブ教育」という。


日本では同教育の実現のため、障がいのある生徒を対象に、障がいによる学習上または生活上の困難を克服するための特別指導を行う通級制度を'93年より小・中学校で開始し、'18年4月から対象を高等学校まで拡大した文部科学省が「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」を掲げ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の4番目には「質の高い教育をみんなに」とある。

教育現場には、全ての教員が特別支援教育に関する一定の専門性を有することが掲げられたが、教員が専門性を高めるために重要となる特別支援教育の専門家による指導については、離島や僻地の学校では地理的な制約により指導が受けにくい、学校や教員の障がいの理解が充分ではない、指導員が不足しているなど、課題があるという。

香川大学と富士通は、香川県教育委員会、小豆島町教育委員会、土庄町教育委員会の協力のもと、障がいの有無にかかわらず誰もが共に学べるインクルーシブ教育の実現に向けて、障がい理解の促進や特別支援教育の専門性向上にVR(仮想現実)やテレプレゼンスなどICT(情報通信技術)を活用する実証研究を開始する。

障がいがある子どもの教育に携わる小豆島地域の小・中学校、および'18年度より通級指導制度が開始された高等学校の計5校と香川県の教育に関する研究および教育関係職員の研修を行う教育センターの教員・支援員約50人を対象に11月20日から来年3月31日まで行うという。実証研究では、教員と支援員が自閉症者の感覚過敏を体験できるイギリス国立自閉症協会制作の全天球映像を用い、「VRで障がいがある子どもたちの困難を疑似体験し障がいへの理解を深め学ぶ『障がいVR体験』」の有効性を検証。

「360度撮影可能な全天球カメラによる『遠隔授業指導』」では、ヘッドマウントディスプレイなどを装着し臨場感ある状態でビデオを確認した専門家が、教員や支援員に教え方や子どもたちへの接し方などについて的確なアドバイスを行う。また、「離島の教員と指導者をテレビ会議で結ぶ『遠隔教育相談』」では、香川大学教育学部 坂井研究室・宮崎研究室と富士通が共同で構築する遠隔支援システムにより、画面越しの対面教育相談の有効性を確認できるという。

香川大学と富士通は、全国の教育機関などへ、今回の実証研究の成果を広く公開する予定であり、富士通はその成果を反映したICTサービスを開発し、あらゆる人々の活躍の推進など、SDGs4「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」グローバル目標の達成に向けて貢献していく構えだ。