5G、時速120kmで走る車とハイパフォーマンスデータ通信

東京オリンピック・パラリンピックの開催と同様、第5世代移動通信システム(5G)の実用化もカウントダウンが始まっている。現在主流のLTEよりも100倍速く、低遅延、多数端末の同時接続も可能となるそれはIoT社会の拡大、近未来のコネクテッドカーや自動運転にも重要なインフラとなる。


2020年の5G実現に向け、研究開発・実証、国際連携・協調、周波数の具体化、技術的条件と割当て方針の策定が総務省で推進されている。

今月19日、NECは、NTTドコモと共同で、5Gのキーテクノロジーの1つ「超多素子アンテナ(Massive MIMOアンテナ)」を搭載した5G基地局が、5G移動局の高速移動環境においても大容量・高速・高品質な通信を実現可能であることを検証する実験を開始した。5Gの商用周波数候補である4.5GHz帯対応の上記アンテナを搭載した5G基地局(総務省委託研究プロジェクトの一部成果を含む)を使用する。

実験の第一弾として国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)にて、高速走行する自動車に搭載した5G移動局と、テストコース脇に設置した5G基地局との間で無線データ伝送を行った。結果、時速120km走行時において同アンテナの指向性(ビーム)が移動局を追従すること、移動局静止時の最大下りデータレート(100MHz帯域幅、2×2MIMO伝送により705Mbps)と同等の性能であることを確認した。

Massive MIMOアンテナは特定の方向に対して電力が高く、その他の方向には電力が低いビームを形成することで、信号品質やデータ伝送速度の向上が可能であり、5Gの大容量・高速・高品質などの要求条件を実現するための重要な技術の1つ。これを5G基地局に適用し、高速移動中の車両内で5G移動局を利用するためには、移動局の動きに合わせて素早くビームを形成し、追従させる必要があるという。

NECのMassive MIMOアンテナを搭載した基地局は、5Gの信号フォーマットに対応し、TDD(時分割複信)の上り信号の受信結果から直接下り信号のビームを形成するため、移動局に最適なビームを高速に形成可能(今回のビーム更新周期は2.5ms)。今後、都市部や地方など様々な条件・環境下で、走行中の自動車や列車などに5G移動局を搭載し、観光や医療など多様なユースケースを想定した検証を行っていくという。同社は、この実験を通して、NTTドコモとの共創により、高速移動環境における5Gを活用した新たなサービスの実現を目指す。

この度の実験には、NTTコミュニケーションズが総務省から請負った平成30年度「高速移動時において平均1Gbpsを超える高速通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討」の成果の一部が含まれているとのことだ(請負内容の参考資料:総務省PDF「第5世代移動通信システムについて」P.6表)。