物理シミュレータを高速・高精度なAIシミュレータに変換

富士通アドバンストテクノロジは、欧州富士通研究所、富士通研究所と共同で、機能を維持したまま、物理シミュレータを高速・高精度なAIシミュレータに変換するAI技術・基盤を開発した。


AIシミュレータは、複雑な事象に対しても非常に良い近似計算を行うことで、既存手法の数千倍もシミュレーション時間を短縮させる。そのことにより、CAE(Computer Aided Engineering)、製品設計といった応用分野に適用できる。

AIシミュレータには幅広い産業応用が期待されており、CAEの場合には、事前検証による開発期間短縮および試作費用削減など、製品開発をする上で重要な役割を果たしている。しかし、これまでAIシミュレータは用途に応じて毎回作成する必要があり、その作成過程には莫大な時間と専門家の知見が必要だった。そこで、多くの種類の物理現象に汎用的に適用できるAIシミュレータ基盤を開発した。

これまでのAIシミュレータでは、限られた物理現象しか再現できなかった。同社では、その応用範囲を広げるために物性値、輻射、外部磁場といった幅広い範囲の物理特性を扱うことができるAIシミュレータ基盤を開発した。この基盤を用いることで、多くの種類のAIシミュレータに同じディープニューラルネットワークを用いることができ、入出力操作を標準化した汎用の手順を用いることができる。

同社では、熱流体シミュレーションにAIシミュレータ基盤を適用。これは電子機器の冷却の設計と検証によく用いられる、流体・固体間の熱交換をモデル化した3次元熱伝達を含むもの。これには複数の物性値、熱源、輻射を扱う必要がある。ある事例では誤差を2%以内に抑えつつ、数千倍高速なAIシミュレータを生成できることを確認したという。

同社は2019年度中に富士通のものづくりデジタルプレイス「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA」の製品開発基盤「Flexible Technical Computing Platform」に本技術で生成したAIシミュレータを活用していく予定。