2017年の国内プライベートクラウド市場は、前年比40.6%増の4,223億円
現在、国内市場では「クラウドファースト」から「パブリッククラウドファースト」へと、クラウド戦略を変更する企業が増加している。その背景には、パブリッククラウドの「セキュリティ」に対する漠然とした懸念が解消されると共に、従来型ITからのパブリッククラウドへの移行を支援するツールやサービスの拡充などが挙げられる。
企業におけるクラウド戦略の見直しは、国内クラウド市場に大きな影響を与えている。これまでの国内市場では、パブリッククラウドとプライベートクラウドは補完しながら、国内クラウド市場の成長を促してきた。しかし、パブリッククラウドの発展がプライベートクラウド市場の成長を阻害する要因へと変化している。
一方、基幹系システム領域では「過去資産(ソフトウェア、データ、ITスキル)の継承性」や「柔軟な運用性」を重要視し、パブリッククラウドではなくプライベートクラウドを選択する企業は多く、国内プライベートクラウド市場の成長を促進しているという。
プライベートクラウドでは、基幹系システムの従来型ITからの移行だけではなく、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)に対する関心も高まっている。
中でも、効率化を目的とした「産業特化型の共同センター」から「クラウドによる効率化と、DXの基盤」となるインダストリークラウドは高い成長が見込まれる。また、ハイブリッドクラウドと相性が良く、優れた管理性を有する「ハイパーコンバージドシステム」への注目も高まっている。IDCでは、これらの動向が今後の国内プライベートクラウド市場の成長を促進すると予測している。
国内市場では、すでに複数のクラウドを利用するマルチクラウドが浸透。しかし、クラウドごとの個別導入に留まることが多く、運用管理の効率化やガバナンス、セキュリティの強化といった課題が顕在化している。
複数のクラウドを統合的に運用管理するハイブリッドクラウドでは、高い柔軟性を有するプライベートクラウドが、その核としての重要性が高まっている。IDC Japan ITサービス リサーチディレクターである松本 聡氏は「人の知見/労働力を活用すれば運用管理の柔軟性を高めることは可能である。しかし、運用管理の効率化や、ガバナンス/セキュリティを強化するためには、ソフトウェアを活用した自動化は欠かせない。また、運用管理だけではなく、開発の自動化を合せて強化することがベンダーには求められている」と分析している。