65歳以上で独り暮しをする男女の増加は顕著である。1980年に男性約19万人、女性約69万人であったが、2015年にはそれぞれ約192万人と約400万人――高齢者人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっている。
平成29年版高齢化白書(内閣府Web)にそんな事情が示されている。そして、加齢に伴う身体及び認知機能の低下による独居高齢者の閉じこもりや社会的隔絶が問題となる一方、高齢者におけるADL(日常行動)の維持向上では家族や医療介護従事者の適切な介入・支援が不可欠であり、フレイル(心身の虚弱状態)の重症化防止や要支援・要介護状態の早期発見に向けた具体的な取り組みが重要になっているという。
NECは、フレイルの重症化防止に向けてタブレット端末を活用、バーチャルアシスタントによるコミュニケーションシステムの研究開発を行う。コミュニケーションロボ「PaPeRo」の実績・ノウハウを盛り込んだ「Tablet PaPeRo」を用いて、季節・時間帯に応じた声かけや服薬・通院等のスケジュール通知、表情や音声に合わせた画像等を表示しSNS共有、日々の体調を把握する対話型AI(チャットボット)を、虎の門病院院長と東京大学准教授監修のもと開発する。
同システムを用いて高齢者の日常における孤独感の軽減や、要支援・要介護の初期症状に対する気づき、心身の活力低下の見守り・安否確認など、利活用のための評価・検証を行う。ふくろうクリニック等々力の協力のもと、世田谷区在住の独居高齢者を対象に、システムの有効性検証を来年4月から実施する予定だという。
AMED「ロボット介護機器開発・標準化事業」の一環で実施する今回の研究開発を通じて、同社は、高齢者と家族や医療介護従事者との安全・安心なコミュニケーションシステムの実現を目指し、独居高齢者におけるフレイルの重症化防止やADLの維持向上に貢献していく構えだ。