人の暮らしや産業における変革は蒸気機関や電力などその時々の最新技術によってもたらされてきた。そして今、IT(情報技術)の浸透が社会全般の物事をより良い方向に変えていくというデジタルトランスフォーメーション(DX)が、多彩な分野で始まっている。
日本では近年、eコマース(電子商取引)の普及や配送ニーズの多様化などが進んでいる。これに伴い物流現場でドライバー不足や長時間労働が大きな課題となる一方で、配送計画の立案はベテランの経験に頼っていて、複雑化する条件を満たす最適配送の実施が困難になりつつあるという。日立製作所は、三井物産とAI(人工知能)などデジタル技術を活用したシステムを構築、配送業務の最適化に向けて協創を開始する。
配送実務を細かく分析し、重要な条件(納品日時、物流センター・拠点位置、走行ルート・時間、渋滞、積荷・滞店時間、車格、ドライバー条件など)を全て変数化。熟練者の経験も取り入れた配送計画の自動立案アルゴリズムを実運用し、計画の実効性を高める。データ収集・分析にIoTやAIを用いて計画精度を継続的に上げるとともに、ダッシュボードでKPI可視化の有効性を検証する。
現場実務のDXに注力する三井物産と、デジタルイノベーションを加速する「Lumada」を提供する日立は、これまでの検討で、従来に比べてトラック台数を最大10%削減でき、かつ短時間に熟練者と同等かそれ以上に実行性のある配送計画の立案が可能との見通しを得た。ゆえに今年11月より、三井物産グループ会社の小売業向け配送業務とレンタル集配送業務にてシステムの導入効果を実証するという。
三井物産グループは'19年度をめどに同システムの本格導入を進める予定であり、「配送業務最適化」をフォーラム展示する日立は、協創の成果を「Lumada」の物流分野向けソリューションに取り込み、さまざまな業界向けにサービスを提供していく構えだ。