2017年の働き方改革関連ICT市場は4,170億円、矢野経済研究所調査

矢野経済研究所は、国内のワークスタイル変革ソリューション市場を調査し、製品カテゴリー別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。働き方改革を目的として業務効率化・生産性向上を実現するICT製品やサービスをワークスタイル変革ソリューションと定義している。


矢野経済研究所では、2017年度の国内ワークスタイル変革ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比5.0%増の4,170億円と推計した。2017年の動向としては、3月の「働き方改革実行計画」の閣議決定に加え、長時間残業による労災問題が社会的に注目を集め、長時間残業抑止ツールや勤怠・労務管理システムの導入及び入れ替えが広がったとみている。

また、7月には政府主管で「テレワーク・デイ」第一回目が実施され、企業におけるテレワーク浸透が推進された。テレワークはセキュリティ・マネジメント面での課題があるため、制度およびシステム導入は一部企業に留まっている。しかし、デスクトップ仮想化、在席管理システム、Web会議システム、モバイル端末管理などのテレワーク関連システムの普及が進んだ。

導入はしたものの利用率が高まっていないという課題があり、今後はテレワーク利用における定着化や遠隔コミュニケーション強化、データやナレッジ共有を含めた支援サービスの需要が高まると同社は予測している。

大手企業では、社内で活用していた各種のコミュニケーションや情報共有のためのツールやオフィス製品を、統合型情報共有クラウドサービスに集約するといった動きがみられた。フリーアドレス制オフィスの導入を行った企業では、各種ICT設備投資のほか、電話を固定電話からモバイル回線に一部置き換え、内線電話をスマートフォンで受信可能にするなど、物理的なオフィスの変革に合わせたIT投資が始まっている。

また、これまではIT投資に様子見であった企業でも、比較的初期投資を抑えられるWeb会議システムやクラウド型グループウェア、名刺管理システム、タスク管理機能付きビジネスチャットツールなどの導入が進んだ。

矢野経済研究所では、「シェアオフィス・コワーキングスペース」に注目している。シェアオフィス・コワーキングスペースとは、その企業で働く人だけが使用するような従来のオフィスではなく、様々な企業・業種の従業員や個人利用者が執務スペースを共有する新しい形のオフィスを指す。

シェアオフィス・コワーキングスペースを利用する利点として、「通勤・移動時間の短縮」「移動交通費の削減」「社外リソースとの協働」などが挙げられる。過去の利用者は個人事業者や小規模事業所、スタートアップ企業など、オフィス投資の予算が小額の場合や、限定された期間利用のケースが多かった。

しかし近年、働き方の多様化に伴う「サードプレイスオフィス」に対する需要、グローバルでの市場競争に対抗するための協働・協創ニーズへの高まりを背景に、大手・中堅企業の法人契約が進んでいるという。

将来展望として、2018年度以降、働き方改革に向けた投資を本格化する企業が増加し、初期投資が膨らみやすいファシリティ関連ソリューション、後回しになりがちであったセキュリティ関連ソリューション、各種システム・機能の統合を目的としたインテグレーション案件が増加する見通しを示した。

さらに、ホワイトカラー職種の定型業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)は、認知度が高まった2017年度は導入には様子見の企業が大半であったものの、2018年度には導入に踏み込む企業が増加する見込みである。

同市場は今後も堅調に拡大していき、2016年度から2022年度までの年平均成長率(CAGR)は6.0%で推移し、2022年度の国内ワークスタイル変革ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は5,618億4千万円になると予測する。