近年、ヘルスケア・医療分野でも、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術によるデジタル変革が進みつつある。病変部位等の画像診断で医師を支援するAIに対して、IoTの多くは利用者や医療従事者らが直接データ活用することを目標にしている。
昨秋の総務省統計局「人口推計」によると、日本の総人口のうち65歳以上の高齢者が占める割合は27.7%。介護を要する高齢者の数も増加傾向にあり、介護施設では限られた人数の介護スタッフで各居室を巡回し、入所者の食事や入浴、排泄などの介助のみならず健康状態等まで常に管理・把握する必要がある。介護スタッフ一人に掛かる業務量は膨らむ一方だという。
日立システムズは、介護・医療施設向けに、赤外線センサやマット型の生体センサ、尿意検知センサなど、さまざまなIoTセンサの活用により入所者の状態を迅速に把握するとともに、「福祉の森」などの介護記録システムと連携して、入所者の健康状態を一元的に管理する見守りシステムの実証実験を9日から開始し、今年中のサービス提供をめざす。
複数センサからのバイタル情報や生体情報等を、スタッフルーム備え付けPCやタブレット端末、スマホにリアルタイム表示。状況の可視化により居室への空振り訪問回数を大幅に削減し、異常検知の際にはより迅速かつ適切な対応が可能となる。今回のシステム(国際福祉機器展に参考出展)では、血圧測定結果や検温データ等の介護記録に費やしていた時間を短縮する。専用の生体測定機器の採用により、自動で介護記録システムにデータ連携できる。
バイタルデータと、各居室の多彩なIoTセンサからの受信データを集約することで、各種介護記録帳票が簡単に短時間で作成可能になるという。同社は、一元化したデータとAIなども組み合わせることで、将来的には健康の改善や増進、未病といった健康科学の分野までサービス提供の範囲を拡大していく考えだ。