次代のモビリティサービスを構築する、戦略的提携のもと新会社発足

新たな時代を予感させる。4つのトレンド「CASE」が近ごろ我々の耳目を引く。コネクテッド、自律、シェア、電気と聞いて、敏感に反応するのは自動車業界に留まらない。「破壊的テクノロジー」を好んで使うIT(情報技術)業界をはじめ、さまざまな周辺業界が「CASE」に熱視線を送っている。


多種多様な技術革新によって地球が急速に小さくなったように思える今、日本一だ、いや世界一だと言って革張りの椅子に深く腰掛けていたら、明日にはその地位を失うかもしれない。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代に突入し、共有と、AI等による自動化の大波が押し寄せている。IT業界と自動車業界の垣根が崩れ始めたのは昨日今日のことではなく、クルマが電子的にどんどん進化し、動くコンピュータシステムと化した頃に遡る。

自動ブレーキなどの安全運転支援技術はカメラやセンサからの情報処理をベースにしている。世界でクルマの電動化が進展し、かつシェアリング経済が台頭して、機が熟したと言うことだろう。半導体設計大手の英Armを傘下に収め、ライドシェアのUberなどに出資しているソフトバンクと、トヨタ自動車は、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、新会社「MONET(モネ)」を設立して、今年度をめどに共同事業を開始する。

MONETは、ソフトバンクの「情報革命で人々を幸せに」とトヨタの「全ての人に移動の自由を」の二つのビジョンを融合し、安心・快適なモビリティ社会の実現を目指すという。社名には「全ての人に安心・快適なモビリティをお届けする、Mobility Networkを実現したい」両社の想いが込められている。トヨタのコネクティッドカー情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」と、ソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させ、車や人の移動などに関するさまざまなデータを活用する。

需要と供給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする未来のMaaS(サービスとしてのモビリティ)事業を開始する。MONETでは、まず、利用者の需要に合わせてJIT(ジャスト・イン・タイム)に配車が行える「地域連携型オンデマンド交通」「企業向けシャトルサービス」などを、全国の自治体や企業向けに展開していく予定だという。

そして日本政府が自動運転レベル4の市場化をめざす(内閣府資料)、'20年代半ばまでには、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス専用次世代EV「e-Palette」による「Autono-MaaS」事業を展開――。移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどのモビリティサービスを需要に応じてJITに届けるという。将来のグローバル市場をも狙っている。

両社の記者会見の模様はソフトバンクが動画配信している。