人工知能(AI)、機械学習(ML)の研究の場が揺れている。ML研究専門誌「JMLR」はこの分野の世界最高峰として、AIの発展のために論文を無償公開しているが、他の学術・科学誌では研究者らに購読料を請求するとして――。それほどに今、AI技術は世界中から注目されている。
今月1日、富士フイルムホールディングスは、アカデミアとの共創により次世代AI技術を開発する拠点FUJIFILM Creative AI Center「Brain(s)」を東京・丸の内に開設した。同社はこれまで主に画像診断や一般写真の領域で、画像から必要な情報を読み取るAIを開発。今後は、医療・社会インフラ分野などでの事業活動から得られる多様なデータを組み合わせて「統合的に理解や判断を行い、現場を支援するAI技術」へと発展させていく。
たとえば医療の検査結果などの生体情報を画像情報に組み合わせる。さらに、富士フイルムHD独自のAI技術を、診断レポートや医学書などの言語化された知識やヒトの経験知とも結び付ける。しくみによって、さまざまな社会の課題を解決する次世代AI技術をアカデミアと協働で開発していく。
ディープラーニング(深層学習)用として世界最速のスーパーコンピュータを今月中に導入することにより、国内トップレベルの研究環境を構築し、AI技術の開発をさらに加速させる。AI/ICT(情報通信技術)人材の育成では、新たな取り組みとして「FUJIFILM AIアカデミー」を開講する。丸の内という地の利を活かし、AI研究を進めるスタートアップ企業等とコラボする「ICTオープンイノベーション」を実施する。
同社は、「Brain(s)」を、富士フイルムグループのAI技術者の研究開発拠点として活用するだけでなく、アカデミアと緊密な研究活動を行う場とすることで、それぞれの「知=脳」を結集し、次世代AIの技術開発を協働推進していく考えだ。