通信事業者向けネットワーク機器市場は緩やかな上昇へ

IDC Japanは、通信事業者向けルーターと通信事業者向けイーサネットスイッチからなる通信事業者向けネットワーク機器市場の2017年実績と予測を発表し。2018年は、IDCが同市場に関する調査を始めた2008年以降、最も低い水準に終わった2017年を7.5%上回り、3年間続いた市場の低迷からようやく抜け出すと予測する。


国内通信事業者向け市場は、LTEサービス向け投資が一巡した2015年以降低迷が続いた。2017年の通信事業者向けネットワーク機器市場は、前年比成長率マイナス7.0%と前年をさらに大きく割り込み、市場規模は898億8,600万円となった。

一方で、明るい兆しとしては、止むことのないトラフィック増加と5Gサービス開始でさらに複雑性の増す通信事業者ネットワークにおいて次世代化志向の胎動が見られている。2017年に見られた、次世代ネットワークの運用管理/トラフィックエンジニアリング技術として期待されるセグメントルーティングの商用環境への実装などは、次世代化志向の先駆けと言える。

2019年以降は、2018年の回復基調に5Gサービスに向けた投資も加わる。国内通信事業者向けネットワーク機器市場の2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR)は、6.8%と予測する。ただし、5Gサービス開始という大きなイベントが控えているにもかかわらず、市場は比較的緩やかに回復するとみている。

5Gサービス開始時点では、既存LTEサービス用設備の増強が中心になるため、LTEサービス開始時ほどの設備投資が必要ないと考えているからだという。また、市場規模もLTEサービス用設備投資に沸いた2011年~2014年には及ばず、2022年時点でもLTEサービス向け開始時である2010年と同水準の1,250億2,300万円に留まると予測している。

通信事業者ネットワークの次世代化においては、オープン化やネットワーク機器のハードウェアとソフトウェアを分離する「Network Disaggregation」、さらにはソフトウェアの内製化も現実味を帯びてきた。

「ネットワーク機器ベンダーは、オープン化や内製化が進んだ通信事業者ネットワークで、自社で何ができ、どこから収益を得るのかを、現実に起こり得る世界として考える時を迎えている。これまでハードウェアネットワーク機器ベンダーが一体で提供してきたハードウェア/ソフトウェア/サービスを、自らが分解して強みを見直し新たな戦略へと昇華していくことが求められる」とIDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャーである草野 賢一氏は述べている。