バイオ
長寿命核分裂生成物の低減と資源の有効利用を目指す
日立製作所は、原子力発電所の使用済原子燃料を再処理する際に発生する高レベル放射性廃棄物の中から、資源として有用なジルコニウム(Zr)を90%以上の効率で回収する技術を開発した。長寿命核分裂生成物の低減と資源の有効利用を目指す。
この研究は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」(藤田玲子プログラム・マネージャー)の一環として実施した。
長寿命核分裂生成物(LLFP)を短寿命核種もしくは安定核種に核変換することで放射能を減らす方法の開発も進められており、同技術と組み合わせることで、LLFPの低減と有用資源であるジルコニウムの回収を可能にする。
原子力発電所の使用済原子燃料を再処理した際に発生する、液体状の高レベル放射性廃棄物(以下、高レベル廃液)中には、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、セシウム(Cs)など半減期が数十万年以上もある元素が存在する。
今回、日立はLLFPの低減と資源の有効利用を目指して、耐火物やセンサー材料などとして広く産業に利用されているジルコニウムに注目し、高レベル廃液から高効率に回収する技術開発に取り組んだ。
研究では、高レベル廃液にモリブデンを添加してジルコニウムを含む沈殿物を生成し、その後、沈殿物とフッ素を反応させることでジルコニウムを回収する、ジルコニウム回収プロセスを考案。模擬高レベル廃液を用いてジルコニウムの分離回収試験を実施し、高効率に回収できることを確認した。今後、高レベル廃液を用いた試験などにより、技術の確立と実用化を目指す。
開発した技術を検証するために、高レベル廃液を模擬した試験溶液を用いたジルコニウム沈殿生成とフッ化分離試験を実施したところ、回収率93%でジルコニウムを回収できることを確認している。
今後、実際の高レベル廃液を用いた試験などを通じて、技術の確立と実用化を目指し、高レベル廃液の放射能低減と資源の有効利用の実現に貢献していく考え。