阪神高速の東神戸大橋、およそ5億自由度でコンピュータ解析

高度成長期、先の東京五輪の頃に建設され、この国の産業と暮らしく支え続けてきた。巨大インフラが老朽化している。その延命治療と健診は必須の事業となっている一方、少子高齢化にともなう人手不足は深刻だ。

それゆえ国交省が推進する「i-Construction」をはじめ、政府はデータ駆動型の「超スマート社会」をめざし、産学はAIやIoT、ロボティクスのより広い分野への適用と実用化に懸命である。

橋などの社会インフラ構造物について、点検業務などの維持管理を効率良く行うことが求められている。橋は人々の生活に欠かせない重要インフラの一つであり、地震などの自然災害発生時にはその状態把握を迅速に行う必要があるという。

阪神高速と東芝は、5号湾岸線東神戸大橋をコンピュータで精緻に再現し、車両荷重が橋全体にどのような影響を及ぼすかを評価する、約5億自由度(8千万の点×6方向の動き)の超大規模解析技術を開発。複雑な実形状を簡単な梁に置き換える従来モデルと比較して、構造の細部の危険箇所を特定する精度が飛躍的に向上したモデルを用いて、車両荷重による橋全体の変形を評価可能であることを実証した。

両社は、物理世界のモノをデジタル空間で忠実に再現するアプローチを適用し、「橋梁デジタルツイン」の実現をめざす。これにより、経年劣化状況の診断、維持管理業務の効率化、災害時の橋の状態把握の迅速化、より適切な防災対応も――。力のかかり方や変形が構造のどこで生じるかといった細かい分析ができ、精密な解析が可能になる。

現在実施中の各種センサーネットワークを用いた実測結果との比較を通じて解析モデルの有効性を検証していくとともに、風や車両走行による振動、日照による温度変化で生じる伸びなど、今後は橋梁に影響を与える様々な事象に対する解析機能の拡充を図っていくという。

開発技術の詳細は北海道大学で開催の土木学会全国大会にて、30日発表される。