ワイヤレス給電、世界市場はクルマと産業機械を取り込み拡大する

家や車の中、職場などでそのうえに置くだけでスマートフォンを元気にしてくれる。ワイヤレス給電器の便利さを一度味わうともう後戻りできない。ケーブルにつないで充電するなんて、街の景観を台無しにする電線の恨みか、アポロ計画の遺物かと思えてくる。

ワイヤレス給電機能の初搭載は'11年の「AQUOS PHONE f SH-13C」。その後も複数の日本メーカーがNTTドコモと共同で、WPCのQi規格対応スマホを発売していた――。当時はワイヤレス充電器の種類が少なく、充電速度や精度も未洗練で、消費者がその利点をよく分かっていなかった。

が、'15年「Samsung Galaxy S6」での採用を契機にいっきに数千万台のワイヤレス受電端末が登場し、その充電器の供給企業も増えてワイヤレス給電の知名度は上がった。そのシステムの利点が広く知られ、外付けワイヤレス充電レシーバーが販売されるなど、普及が加速した。結果これまでに1,000種類超のQi規格認証デバイスが市場に出荷されている。

規格争いではQiが圧勝――。昨年Appleが加盟して以降、様々な業界の企業がWPC陣営に加わり、9月に252社であったメンバー数が今年6月には583にまで増えているという。矢野経済研究所は、'18年のワイヤレス給電市場を調査し、用途別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。詳細は同社レポートにて確認できる。

'19年のワイヤレス給電世界市場は、メーカー出荷金額ベースで前年比126.2%の2,197億円、'20年には前年比108.6%の2,385億円になると予測する。伸びの鈍化は'17年に市場の約65%を占めたスマホ用ワイヤレス給電システムの普及が一段落しことに因る。が、他の小型電子機器、電動車、産業機械などに受電モジュール・受電機器が搭載されることにより、2023年、同市場は3,590億円にまで成長するという。