水産漁業IoT、AIにて稚魚を自動選別

デジタル変革によって人々が豊かに暮らせる社会、Society5.0は人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、ロボットや自動運転技術などを活用して実現される。と聞いても、水産資源の枯渇を憂う「魚好き」には今ひとつピンとこない――。

大阪キタや東京ギンザのその店で、クロマグロやヒラメ、ブリやカンパチの刺身に舌鼓を打とうとしても予約でいっぱい。店舗数をもっと増やして欲しいと思っている人も多いだろう。紀州の恵み「近大卒の魚」について、近畿大学水産研究所では、近大マグロをはじめとする多くの魚種の養殖研究を行っていて、なかでもマダイは研究の大きな柱の一つになっているという。

現在、研究の一環として近畿大学水産養殖種苗センターでマダイ稚魚を生産し、大学発ベンチャーのアーマリン近大を通じて全国の養殖業者に販売。その数は日本の年間生産量の24%、約1,200万尾にも上る。稚魚の出荷前に行う選別作業では、基準に照らして生育不良のものを取り除くなどする際、目検と手作業でそれを行う。専門作業員は高度な経験と集中力が要求され、体力的負担も大きいという。

近畿大学水産研究所、豊田通商、日本マイクロソフトは、これまで人手に頼っていた養殖現場での稚魚の選別作業に対し、AIやIoTなどを活用した業務効率化を図る「稚魚自動選別システム」を開発。その実証実験を開始していることを、今月21日に公表した。

同システムでは、生け簀から稚魚を吸い上げるポンプ制御を自動化――ベルトコンベア上の魚影をMicrosoft AzureのAIで解析し、一定面積あたりの稚魚数を分析。さらに選別者のワークロードを機械学習させ、作業のための最適値を割り出し、ポンプの流量調節作業を自動化するソフトウエアを試作したという。

この実証実験を継続する3者は、データ収集・分析によって改良したシステムを来年3月までに本番環境へ実装する考えだ。