インキュベータ内の培養細胞の状態をモニタリングする光学装置を開発

熊本大学(大学院先端科学研究部 中島雄太准教授)、九州大学(大学院システム情報科学研究院 興雄司教授)、ウシオ電機の共同研究により、インキュベータ内で培養される細胞の状態を継続的かつリアルタイムにモニタリングすることができる光学測定装置を実用化した。

この装置は細胞培養プレートと同程度のA6サイズの大きさであり、96ウェル細胞培養プレートの個々のウェルの培養状態を直接管理する。商品化に先駆けて、2018年8月30日から31日に東京ビックサイトで開催される「イノベーション・ジャパン2018」で同装置の試作品を初めて展示し、測定デモを行う。

医療や創薬の分野において、細胞の培養状態を管理することは非常に重要だ。例えば、再生医療では、iPS細胞などの幹細胞を目的の細胞へと分化誘導する際、あるいは未分化を維持する際、培養容器中の細胞全体(群)の状態を把握することが必要になる。

また、創薬やバイオ分野においては、細胞群としての培養条件の統一により、高精度かつ効率的なスクリーニングを実施できる。従来、これらの細胞品質管理には、顕微鏡を用いた形態評価や、分光光度計による吸光度測定・濁度の測定、細胞培養技術者による培地の色変化を基にした判断などで行われていた。

この場合、細胞の状態を把握するたびにインキュベータから細胞サンプルを移動させる操作が必要となり、不純物混入の要因だった。また、操作する技術者の経験に依存する点や人為的ミスによる細胞の汚染、品質の不均質性などが課題であったという。

今回、シリコーン樹脂を用いた光学系技術であるSOT(Silicone Optical Technology)を用いて製作した高いS/N比を実現した空間フィルタを基盤要素として使用することで実現した。培養容器の移動や蓋の開放作業が必要ないため、培地の汚染や感染のリスクを最小化でき、培養環境を変化させずに測定できるという。

研究グループでは、再生医療のみへの使用に限定されるものではなく、細胞を扱う全ての研究や産業に通じる装置だと説明する。