この調査は、自動車が車外のネットワークと移動体通信でつながることで実現されるサービスとして、安全性や安心感、効率性、快適性を訴求する「効率の良い移動サポート」「インフォテイメント」など6つのコネクテッドビークル関連サービスに対する、国内の個人ユーザーの顧客価値を分析したもの。
コネクテッドビークル市場に参画する自動車メーカーや金融、飲食/宿泊/娯楽関連などの様々なサービス事業者の最終的な目的は、コネクテッドビークルならではのサービスを生み出しユーザーに提供することによる収益の追求にある。
この調査では、個人ユーザーの個々のコネクテッドビークル関連サービスに対する有償契約意向(需要レベル)とサービスの価格イメージを尋ね、回答結果に基づくPSM分析(価格感度測定法)からサービスの「最適価格」(価値認識レベル)を算出し、顧客価値分析を行った。PSM分析は、新製品・サービスの市場導入価格や、既存製品・サービスの改定価格を設定する際に用いられる分析手法のことを指す。
今回の調査から、安全性/安心感を訴求する「運転上の安全/安心サポート」「車両診断/通知」サービスにおいては、ユーザーの需要レベル、価値認識レベルともに高いことが分かった。
一方、「効率性/快適性」を訴求するサービスにおいては、「生活関連作業サポート」と「仕事関連作業サポート」サービスについて、需要レベルが低いにも関わらず、価値認識レベルは高いことが明らかになった。
特に、通常オフィスや家庭でインターネットを活用して行う仕事を車中で効率良く行える環境を提供する「仕事関連作業サポート」サービスでは、高価格車購入層における価値認識が6つのサービスの中で最も高く、プライベートな時間に仕事をこなすハイグレード車所有層がターゲットになると考えられる。
例えば、運転者が運転中に予定されている会議への参加が難しくなると認識したとき、サービスシステムがその場で会議相手に新たな候補となる日程を打診、設定を行うといったパーソナルアシスタントサービスによる収益機会が期待されるという。
この調査における顧客価値分析から、安全性/安心感を訴求するサービスを付加価値化することが、自動車メーカーを中心とするサービス事業者にとっての収益化への近道と理解される。他方、効率性/快適性を訴求するサービス領域においては、明確なターゲット顧客層を設定したパーソナルアシスタントサービスの展開が収益機会を高めると考えられる。
IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャーである敷田 康氏は「ITサプライヤーは、安全性/安心感領域を中心とするユーザーの価値認識レベルの高いサービスの進化の方向性を見定め、例えば、車両診断を発展させた『故障予知』や、オペレーターという『人間によるコミュニケーション』をAIシステムによって強化したヘルプサービスといった、自動車メーカーが未着手あるいは開発途上のソリューション提案による自動車メーカーに対する収益貢献シナリオを探るべきである」と述べている。