石油化学のパラダイムを変える、カプセル型FT合成触媒を開発

シェールガスやメタンハイドレート等の天然ガス、バイオマス、石炭、可燃性ゴミ、重質油から簡単に製造できる。合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)から、軽油など石油代替燃料、アルコール、オレフィンといった基礎化学品を触媒反応により合成する。

石油価格の高騰時にその経済性が良くなる。FT合成に使える触媒はコバルト、ルテニウム、鉄の3種類のみ。ルテニウムは高価でほとんど商業利用されず、鉄系触媒は反応温度が高く、炭素-炭素連鎖成長に不利で、液体炭化水素(軽油、ジェット燃料など)の生成量が少なく、軽質炭化水素(LPG、軽質オレフィンなど)が多く生成されるうえに、二酸化炭素を多く副生することも課題だ。

そしてコバルトは、最も広く使われている商業FT触媒だが、希少金属であり、電気自動車の普及により現在その価格が2年前の3倍程度になっていて、一日3万バーレルの合成燃料を製造できる反応塔一基で触媒500トンかつ1~2年でその交換を要する巨大FT工場では、コバルト使用量の削減が重要な課題となっている。

FT合成の基本原理は金属触媒ナノ粒子上にて一酸化炭素がカルベンになり、カルベンが金属ナノ粒子の表面で線形重合――触媒的な重合によって、炭素連鎖が延長され、高級炭化水素(液体炭化水素)まで到達する。これまでの金属触媒では担持された金属ナノ粒子のサイズが製品である炭化水素分子の長さを決める。ゆえに、大きなコバルトナノ粒子は分子の長い軽油とジェット燃料を合成し、小さなコバルトナノ粒子は分子の短いLPG、軽質オレフィンを合成することが定説だったという。

富山大学教授らの研究グループは、上記定説を覆し、コバルトの使用量を大幅に削減できるカプセル型FT合成触媒を開発した。シリカ層に覆われたコバルト系カプセル触媒において、「大きな粒子の1/10程度の小さな」コバルトナノ粒子で軽油などを合成できることを新たに見いだした。

カプセル内部では、小さなコバルトナノ粒子表面のカルベン濃度が高く、一旦脱離した炭化水素が再吸着されやすく、炭素連鎖成長が驚異的に加速し、分子の長い軽油とジェット燃料になった。一方、シリカに覆われた大きなコバルトナノ粒子表面ではコバルト原子と一酸化炭素の結合が弱く、カルベン濃度が低く軽質炭化水素を多く生成する原因だと判明した。

従来の担持型FT商業触媒において重量比30~40%だったコバルト触媒が、5~10%以下に削減可能となる。新規FT合成触媒として商業プラントに投入し、さらにFT合成と類似の、二酸化炭素&水素由来の液体燃料合成への応用を目指すという。

JST CREST「超空間制御に基づく高度な特性を有する革新的機能素材等の創製」の研究課題「超空間制御触媒による不活性低級アルカンの自在転換」の一環として行われた。今回の研究成果は、英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」電子版で速報された。