染色体の構造変換を司るタンパク質の構造を解明、東北大学

東北大学は、ヌクレオソーム構造を形成または破壊する活性を示す酵母からヒトにまで高度に保存されているタンパク質である「ヒストンシャペロンHIRA」の立体構造をX線結晶構造解析によって世界で初めて解明したと発表した。

東北大学大学院生命科学研究科の佐藤優花里助教(研究開始当時:高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所研究員)、高エネルギー加速器研究機構の千田俊哉教授、米国ペンシルベニア大学のM.Daniel Ricketts博士とRonen Marmorstein教授、仏国キュリー研究所のDominique Ray-Gallet博士とGenevieve Almouzni所長らの国際共同研究グループが成功。研究成果は、2018年8月6日に英国科学誌『Nature Communications』電子版に掲載された。

真核生物の染色体は、ヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが巻き付いた「ヌクレオソーム」という基本構造の繰り返しから構成されている。ヒストンシャペロンHIRAは、ヒトの細胞内にあるヒストン H3の幾つかの種類、特に生殖系列の細胞や受精卵、胚に豊富に存在する「H3.3」のヌクレオソームへの取り込みに関わっている。

分解されやすく沈殿を生じやすいHIRAは、取り扱いが大変難しいタンパク質で、生化学的解析は困難だったため、ヒストンをヌクレオソームに取り込む仕組みは分子生物学における大きな未解決問題の一つだったという。

研究グループは、ヒストンシャペロンの一つであるHIRAがヌクレオソームの形成を制御する仕組みの一部を明らかにした。この研究では、X線結晶構造解析によりHIRAの立体構造を解明し、またヒト細胞株を用いた実験によってHIRAの三量体形成がヒストンやHIRAのパートナータンパク質「CABIN1」との相互作用に必須であることを証明した。これらの発見は、癌などの疾患の発症機構の解明とその治療法の開発に繋がると期待されると研究グループでは説明する。