教師なしML、予習せずに金属表面の分子配列を予測する

人工知能技術のひとつ機械学習(ML)はいま、様々な分野で発展している。多くは膨大な教師データを事前に学習させておいて、都度の課題に解を導出する手法だが、分野によっては十分な量の教師データを用意できないことがある。

用意できるとしても、教師データなしに正解を得られるMLのほうが生産性の高いことは明白であり、そのようなMLの研究も進んでいる。今日、エレクトロニクスデバイスのさらなる小型化・高集積化が要望される中、ナノメートルスケールで起きる分子の「自己組織化」が注目されている。

基板に蒸着した分子が互いに引き合って集合し、微小な構造(超分子構造)を自発的に形成する。その構造は様々だが、電気配線や電子回路に利用可能な超分子構造を形成するには、分子を望み通りの形に集合させる必要がある。が、集合過程の実験機器での制御は容易でないという。

京都大学iCeMSと、東京工業大学の研究グループは、正解と不正解のデータを事前に学習しない「教師なし機械学習」を使って、金属基板上の分子配列を予測するガイドラインの作成に成功した。各研究者が持つ数理科学、理論化学、材料科学の知見を活かしたという。

今回のMLは、分子の化学的特徴とその分子の集合過程との関わりを学習して、その結果を図式的にまとめたものであり、その図を解析することでガイドラインを導いた。これにより例えば電気配線に利用する直線状の超分子構造を形成する際に、どのような分子を用いれば良いのか予測できる。ナノ材料開発向けガイドラインは「教師なしML」方式で予測する点で意義がある。

微小デバイスに必要な部品(微小電気配線など)を形成することにつながるため、ナノエレクトロニクス開発を加速し、いずれロボットや柔らかいディスプレイ、超低消費電力デバイスの実現への寄与が期待される。研究成果は英科学誌「Nature Communications」電子版に掲載された。