量子効果で10倍以上の磁気熱電効果を室温で実現、東大ら

東京大学は、室温で巨大な磁気熱電効果(異常ネルンスト効果)を示す磁性金属Co2MnGaの開発に成功したと発表した。これまで知られていた最高値の10倍以上大きな磁気熱電効果を室温で示す材料を世界で初めて発見した。

東京大学物性研究所の酒井明人助教、中辻知教授らの研究グループは理化学研究所創発物性科学研究センター、米国メリーランド大学の研究グループと協力して成功。

研究では強磁性金属間化合物「Co2MnGa」が、過去に知られている最高値より10倍以上大きな異常ネルンスト効果を室温で示すことを明らかにした。この値は室温以上の高温ではさらに上昇。広い温度範囲をカバーするため、様々な温度の熱源で発電が可能だ。また製造コストが安く、無毒な材料でできており、耐久性、耐熱性にも優れているため様々な場所で利用可能だという。

未利用熱を電気に変換しようという試みは長い間世界中で行われていたが、熱電変換材料の毒性やコストの高さなど様々な問題点のため広く普及するには至っていない。今回の研究は異常ネルンスト効果という全く新しい原理に基づく熱電変換を可能とするもので、無毒・廉価・耐久性など既存技術にはなかった特性を持っている。この未開拓の新技術が今後さらなる研究により発展し、高出力化・薄膜化などにより実用につながることが期待される。その際材料探索の指針には、研究で明らかになった異常ネルンスト効果増大機構が大変有用になるという。

実際に実用化・商品化に至った際には、ボイラーやエンジンの排熱からの発電はもちろん、給湯器や体温などの微量な排熱を無線やセンサーの電源として利用できると考えられる。IoT社会の到来に先立ち、巨大なエネルギーハーヴェスティング市場を席捲するためにも、世界を大きくリードした研究を継続していく必要があると説明する。