企業の製品開発における業績指標に関する分析、ノークリサーチ

ノークリサーチと千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室は科学研究助成事業(JSPS科研費17K12788)による企業活動支援の一環として、企業を対象としたアンケート調査を共同で実施し、「企業の製品開発における業績指標」に関する様々な集計、分析を行った。

大企業だけでなく、中堅・中小企業においても「企業が自ら製品を開発する」といった取り組みは数多く存在する。その際に重要となるのが、「開発された製品に伴う業績(売上額や利益額など)を左右する要因(指標)」は何か?という観点である。

ノークリサーチと千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室が実施した調査によると、「開発された製品の業績を左右する要因(指標)」の探索は企業にとって極めて重要な事柄であることが分かった。

また、両者は一連の調査結果からベイジアンネットワーク分析を適用した結果を紹介している。製品開発は企業にとって経営を左右する重要な活動である一方で、様々な成功・失敗要因が複雑に絡み合い再現性も低いため、決め手となる理論や手法が確立されていない。

田隅研究室では企業の競争力強化につなげるべく、製品開発における実績値を分析し、何らかの傾向、法則、ひいては定石を見出す研究を行っている。今回のベイジアンネットワーク分析による業績指標の構造化によって、以下の考察を得ている。

今回の分析ではKGI(重要目標達成指標/製品開発のゴールとなる指標)に相応しい指標として「3年間の販売数」と「3年間の販売数市場シェア」が導出された。一方で企業にとって開発製品における「3年間の利益額」「3年間の利益率」は特に重要な指標であり、この目標値達成に向けて中間ゴールにKPI(重要業績評価指標)を設定することが多いと推測する。

しかし分析の結果、3年間の利益額に対しては中間ゴールに相応しい指標は先行ノードに存在せず、3年間の利益率には連関する指標が一つもないという結果となった。これは利益額・率の算出に用いる「原価」が製品・部署・企業固有の事情で異なることが起因していると想定されるという。

今回、メディアの反応が「良い」と「悪い」のそれぞれのエビデンスを設定した時、「3年間の販売数」の状況がどう変わるかを推論した。メディアの反響を改善することは販売数に影響を及ぼすが、影響の仕方は二極化しており、必ずしも全ての場合において販売数が伸びるとは限らないことが分かった。

さらに、多少の不具合増加のリスクを取ってベンチャー企業と連携し、学術誌や社内表彰に掲載・選出されるような独自性の高い論文が書ける製品開発を行うことが、市場シェアの向上に貢献するというストーリーが導出された。