インフラ構造物の2次元変位を数ミリ単位で解析

高度成長期に生まれたビルや道路など、日本のインフラ構造物は老朽化が進んでいる。それらを定期的に保守点検して、危険箇所を検知・修繕して事故やトラブルを未然に防ぐ、予防保全への要求が高まっている。そのコストや実施度への懸念とともに。

膨大なインフラ構造物を抱える都市では効率的に、広範囲を網羅して費用負担の軽いスクリーニング検査の実施が望まれている。そこで現在、内閣府SIPにおける合成開口レーダ衛星(参考資料)による微小変位解析技術が有望とされ、実用化が進められている。だがこれはビル等の密集地にてレーダ反射点がどの構造物のものか判別しづらく、様々な高さの物が複雑に立ち並ぶ場所では、2次元解析結果に大きな誤差が生じるという。

NECは、都市部で老朽化するインフラ構造物の健全性を診断するための検査手法として、2つの衛星レーダによる変位解析を統合し、水平垂直両方向の2次元変位を高精度に解析する「2次元微小変位計測技術」を開発した。同技術は、インフラ構造物の個別検査を可能とし、コストのかかる詳細検査導入の判断に活用できるという。

2次元微小変位解析技術は、NEC独自の「反射点クラスタリング」技術により、都市部においても数ミリ単位という高精度な変位解析を実現する。「2次元変位解析に適した、地図情報に基づく正しい対応付け」や、「スクリーニングを容易にする高精度な2次元変位解析」といった特長も備えていて、詳細検査に進むべきか判断するための一次検査として非常に有効な手段となる。

変位解析の精度向上は、スクリーニングの信頼度を高め、IoT(モノのインターネット)、ロボット技術、レーザ計測技術などに基づくさらに詳細な検査技術の導入判断を無駄なく行うことができるなど、老朽化する都市インフラの予防保全における効率化に大きく貢献するという。同社の成果は来週スペインで開催の国際学会「IGARSS」にて発表される。