破壊抵抗と超高温強度を兼ね備えた新しい合金を発明

東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の吉見享祐教授と材料システム工学専攻の佐藤裕教授らの共同研究グループは、室温から超高温度域まで強くて靭性に富んだ新しい耐熱モリブデン合金(モシブチック合金)を発明し、その強度を1400度から1600度の温度範囲で高精度に測定することに成功した。

ジェットエンジンや発電用ガスタービンの心臓部にあたる高温・高圧回転部には、ニッケル基超合金が使用されているが、これら熱機関のエネルギー効率を一層高めるために、新しい耐熱材料、いわゆる超高温材料の開発が求められてきた。一方で、高温で高強度な材料は一般に脆くて壊れやすいという欠点を持っており、実用化に向けてこういった脆性の克服も課題とされてきた。

今回発明した合金は、高融点金属の一つであるモリブデンにチタン、ケイ素、炭素、ホウ素を適度な濃度で混ぜ合わせたもので、実験室内でも溶解・鋳造法によって健全で比較的大きな試料の作製が可能。

また、室温での破壊抵抗は、実用超硬合金と同等だという。これらのことが、十分な試料サイズの確保につながり、1400度以上の超高温度領域でも精度良く合金の強度を測定することを可能にした。測定の結果、耐熱温度はニッケル基超合金よりもおよそ200度も高いことが見積もられた。

さらにこの合金で作製した摩擦攪拌ツールを使用することで、ニッケル合金であるインコネル(Inconel) 600の摩擦攪拌接合に成功し,その優れた耐熱性能を実証した。これにより、本合金の発明は、熱機関の高効率化、信頼性の向上と共に、金属加工技術の高温化、高精度化に貢献するものとして大いに期待できるという。

研究成果の一部は、2018年7月11日18時(日本時間)に英国科学雑誌『Scientific Reports』電子版に掲載された。