幻の粒子を発見、トポロジカル量子コンピューターの実現に期待

京都大学は、蜂の巣状の平面構造を持つ磁性絶縁体の塩化ルテニウム(α-RuCl3)において熱ホール効果が量子力学で規定される普遍的な値を取ることを発見し、「マヨラナ粒子」を実証することに世界で初めて成功したと発表した。

笠原裕一 理学研究科准教授、松田祐司 同教授、大西隆史 同修士課程学生(現・富士通)、馬斯嘯 同修士課程学生、芝内孝禎 東京大学教授、水上雄太 同助教、求幸年 同教授、田中秀数 東京工業大学教授、那須譲治 同助教、栗田伸之 同助教、杉井かおり 東京大学研究員らの研究グループが成功。研究成果は、2018年7月12日に英国の科学雑誌『Nature』電子版に掲載された。

マヨラナ粒子は自分自身がその反粒子と同一という不思議な性質を持ち、理論的予言から80年以上もその存在の確証が得られていなかった「幻の粒子」と言われる。素粒子物理学を中心に探索が続けられてきたが、近年、ある種の超伝導体や磁性体でマヨラナ粒子が出現する可能性が指摘され、大きな注目を集めてきた。研究グループは、世界で初めてその「マヨラナ粒子」を実証することに成功した。

研究成果により、マヨラナ粒子が存在する決定的な証拠が得られただけでなく、マヨラナ粒子による量子化現象が高い温度で実現することが明らかになった。マヨラナ粒子の制御法の開発を行うことで、高温でも動作可能な「トポロジカル量子コンピューター」への応用が期待できるという。