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熱電材料を高性能化する理論を実証
田中功 工学研究科教授、張雨橋 北海道大学博士後期課程学生、太田裕道 同教授、幾原雄一 東京大学教授、Yu-Miin Sheu 台湾・国立交通大学助教らの研究グループは、熱を電気に変換する熱電材料の性能が、狭い空間に電子を閉じ込めることで、従来比の2倍に増強できることを世界で初めて実証した。
熱電材料は、温度差を与えると発電し(ゼーベック効果)、逆に電気を流すと冷える(ペルチェ効果)性質を示すことから、利用されることなく捨てられている廃熱の再資源化で注目されている。
廃熱を効率よく電気に変換するためには、電気を通しやすく、温度差を与えた時に発生する電圧が大きく、熱を通しにくい、性能の優れた熱電材料が必要だが、導電率と電圧(熱電能)の間のトレード・オフ関係が障害となり、性能向上が進んでいない。
この解決方法として、「狭い空間に電子を閉じ込めると、導電率を変えずに熱電能を高められる」という理論が1993年に提案された。この理論は、電気を通す極薄層を電気を通さない層で挟み込んだ人工超格子を用いて実証され、バルク比約5倍の熱電能増強が達成されたが、人工超格子全体の性能としては、バルク(個体の表面や界面以外の部分)の最大値とほとんど変わらないという問題があった。
この問題を解決するため、研究グループは、2016年に新たに提案された理論「大きく広がった電子を狭い空間に閉じ込めることで、より大きな熱電能増強が起こる」の実証に取り組んだ。具体的には、従来よりも約30%大きく広がった電子を人工超格子に閉じ込めた結果、バルク比約10倍の熱電能増強を達成し、人工超格子全体の性能を従来比2倍に高めることに成功した。
研究グループによると、広がった電子を狭い空間に閉じ込めることで、熱電能の増強効果を高め、性能を倍増させるという今回の成果は画期的であり、将来、工場や火力発電所、自動車、コンピュータなどからの廃熱を電気に変えて有効利用する技術につながることが期待されると説明する。