線虫の嗅覚機能を利用したがん検査方法

HIROTSUバイオサイエンス(以下、ヒロツバイオ)と日立製作所(日立)は、線虫の嗅覚機能を利用したがん検査方法「N-NOSE」の実用化に向けた大規模臨床検体解析のために、解析処理数を向上させた「高スループット自動撮像装置」を新たに開発したと発表した。

これまでの手技による解析スループットは1日あたり3~5検体だったが、今回試作した自動撮像装置の導入により100検体以上の解析が可能となる。この試作装置を使用して臨床検体解析を加速するために、日立の研究開発グループ基礎研究センタ(埼玉県比企郡鳩山町)内に「HIROTSUバイオ・日立共同実験室」を開設し、両社同床による研究を開始した。

ヒロツバイオと日立は、2017年4月に線虫によるがん検査「N-NOSE」の実用化に向けた共同研究に合意し、それぞれが両社の強みを生かしながら研究開発を進めてきた。ヒロツバイオは医療機関と連携した大規模な臨床研究を実施し、現在、主要ながんを含む18種以上のがんがN-NOSEにより検出できることを確認している。

日立は、試作した線虫がん検査の自動解析装置により得られた研究開発成果を基盤とし、解析検体数の向上を目指してヒロツバイオとの共同研究による連携を進め、線虫走性解析装置の高スループット化に取り組んでいる。

また、ヒロツバイオは、日本の機関や豪州クイーンズランド工科大学を含む計17の共同研究病院・大学と進めている臨床研究において、現在約900検体(がん患者検体:約550、健常者検体:約350)の解析を終え、感度・特異度ともに約90%という高いがん検知精度を確認している。

日立によると、従来の腫瘍マーカーでは10%ほどしか検知できないステージ0~1の早期がんでも、N-NOSEでは約90%検知できるという点が特徴だという。がんの治療後には、7割の患者においてN-NOSEの陰転化が見られるなど、線虫の尿に対する誘引行動ががんに起因することを裏付ける結果も得られている。ヒロツバイオは、線虫がん検査「N-NOSE」の2020年実用化に向けた研究をさらに進める計画。

日立は、今回ヒロツバイオとの連携により、容器内に4個の走性試験領域を持つ「マルチ走性試験容器」を新しく開発し、これに対応する高スループット自動撮像装置を試作した。この装置は、オートローディング機構を備えることで、1分毎に1枚のスピードでマルチ走性試験容器を撮像装置に取り込むことが可能となり、最大10枚のマルチ走性試験容器を保持できる仕様になっている。また、10分間の走性試験中、各マルチ走性試験容器を1分毎に撮像できる機能もあり、これらによって1日あたり100検体以上の解析が実現可能となった。