私鉄沿線のサブ交通、空白地域に新交通システム構築へ

♪改札口で君のこと、いつも待ったものでした♪ 青春時代に野口五郎さんの『私鉄沿線』を熱唱し、夫婦でTVドラマ『金曜日の妻たち』をドキドキしながら観ていた人たちが暮らす町は今、高齢化の進行という課題を抱えている。多くは丘陵地にある"憧れのニュータウン"ゆえの、宿命とともに。

いわゆるニュータウンは、この国の高度成長期に大都会周辺で多数うまれた。私鉄各社がその開発を得意としていた、沿線のまちづくりはただ鉄道の利用客を増やしただけでなく、人々の希望を満たした。大都市で働き、郊外に暮らす。夢を会社員たちに与えて、少し優雅な文化も創った。けれどもいま、その風景が変わりつつある。

沿線地域において高齢者の増加が顕著であり、勾配の急な地形の住宅地であるなど、移動が容易でない交通空白地域のある「横浜市金沢区富岡エリア」にて、京浜急行電鉄は、横浜国立大学とともに、今秋より「電動小型低速車」の実証実験を始める。両者は本日、新しい交通システムの構築に向けた"産学連携の協力推進に係る協定"を締結した。

京急電鉄が沿線で長年培ってきたまちづくりのノウハウと、横浜国立大学がセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムに参画し積み重ねた経験と実績を融合させ、新しい交通システムを構築し、沿線地域の交通課題の解決および持続可能な郊外住宅地を実現していく。その第一歩として今回、既存路線バスの走らない小道のルートや急な坂道のあるエリアにおいて、登坂力に優れ、移動弱者にも便利な「電動小型低速車」を運行する。

地形的な制約などにより既存公共交通サービスの乏しい交通空白地域を、「電動小型低速車」が定時定路線の循環運行をすることにより、高齢者等の外出機会の創出やコミュニティの再構築を促し、地域の活性化につなげていくという。

京急電鉄では、今後も各地域の特性を活かした沿線の魅力を向上させる事業の検討・推進を行っていく構えだ。