近年、医療現場では手術の高度化に伴い安全性の確保がますます重要になっているという。先天性心疾患、弁膜症、動脈、静脈などと一口に言っても、その治療部位および手術方法、患者の年齢によって、難易度はA、B、Cに分類される。今年4月から新外科専門医制度が発足――。
同制度のグランドデザインにおける2階部分、サブスペシャルティ領域である心臓血管外科専門医制度も、心臓血管外科専門医認定機構が準備していて、同機構では、昨年の新規専門医申請から、患者を対象としない30時間のOFF-JT(シミュレーション、ドライ・ラボ、ウェット・ラボ、アニマル・ラボ等を行うこと)を申請要件に加えてこれをすでに実施している。
上記のような背景から、昨年11月より、手術技能の効率的な向上に貢献するシミュレータの開発・普及に向けて協働している。豊田合成と、早稲田大学発のスタートアップ企業EBM社は、電気で機能する人工筋肉「e-Rubber」を用いて心臓の鼓動を極めて正確に再現できる手術訓練シミュレータ「SupeR BEAT」のプロトタイプを開発したことをきょう発表した。
心臓の動きを摸するのに形状記憶合金の熱による伸縮を用いている現行品「BEAT」に対して、ハイエンド版の「SupeR BEAT」では、電気のオン・オフに速やかに反応して伸縮する「e-Rubber」を活用。不整脈による複雑な拍動パターンや幼児の早い拍動数など様々な状況を想定して細かな動作調整が可能で、より実際の手術に近い環境が再現できる。
心臓外科医26名が参加して先月末にEBMふくしま製造開発センターFISTで行われた研修会では、これを使った冠動脈バイパス手術シミュレーションにおいて、執刀した横山斉教授(福島県立医科大学)から高く評価されたという。両社は「SupeR BEAT」の'19年秋販売開始を目標に、更なる性能アップを図っていく構えだ。