2016年度の国内M2M市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比3.7%増の1,670億円であった。新たにLTE通信モジュールの普及やそれを利用したアプリケーションの拡大もあり、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの主要3キャリアともに堅調に推移している。
加えて、NTTドコモやKDDIのMVNOが提供するサービスも好調であった。2017年度も自動車や流通小売業向けなどMVNO関連での需要拡大を背景として伸びが加速しており、2017年度の同市場規模は前年度比6.0%増の1,770億円の見込みである。
主要キャリアも引き続き拡大基調となっており、エネルギー関連(新電力含む)や防犯・セキュリティ、製造、運輸・物流といった分野でのM2M利用が好調である。
主要なITベンダーやSIerなどでは、「データ収集/見える化」「遠隔モニタリング」などを迅速・廉価に実現できるソリューションをパッケージ化して、トライアルユーザーをメインターゲットにIoTスターターキット(スタンダードパック、お試しキット、PoCキットなど様々な呼称がある)の展開を進めている。
これまでのIoTスターターキットは製造業向けが主体であったが、物流や農業、公益・公共(社会インフラ、エネルギーなど)、見守り・セキュリティ、流通などの幅広い業種・業態向けのキットも販売が始まっている。このようなIoTスターターキットでは、M2Mも利用されており、40社以上の企業が参入している。
2018年度以降は、MVNO関連の需要増等で国内M2M市場の拡大は続くものの、徐々にM2MとIoTの境界線が薄れており、M2M自体の呼称が消失する可能性もある。実際に大手ITベンダーではM2Mを冠した組織がなくなりつつあり、5G以外の次世代テクノロジーであるLPWA(Low Power Wide Area)を利用した通信やAI、VR/AR、作業支援用ロボット、コミュニケーションロボット、ドローンなどの機器・デバイス間への適用が進み、IoT社会を実現するためのアプローチが様々な領域で実装段階に入ってくる。
一方、M2M市場は安定的に推移し、2022年度の国内M2M市場規模(事業者売上高ベース)は2,020億円になると予測する。将来的に、センサーネットワーク社会と表裏一体の形でIoT社会が実現し、M2Mを含めたIoT技術は現在の通信インフラと同様に社会インフラの一翼を担うようになると推測する。