林業ICT、山中の森から麓へリアルタイム画像伝送

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)などを活用する、第4次産業革命が先進各国で胎動している。いま日本では、様々な産業分野でICT(情報通信技術)を軸にした変革が進みつつある。

Society5.0」というコンセプトのもと、社会インフラ、農地・家畜のIoT化や、無人航空機(ドローン)を活用した養殖場の効率化などが、産官学で研究開発されている。けれど林業はどうだろうか――。山林をドローンで俯瞰できるにしても、空から森の中の様子までは把握しきれない。

近年、多雨年と少雨年の降水量差が拡大する傾向にある日本では、洪水や渇水が発生しやすい状況にあり、森林の水源かん養機能(水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化など)への期待も一層高まっている。山林における原木の伐採作業が、木材生産のみならず、同機能の向上にも重要となる。作業は、実施前の地籍調査――原木所有者の確定、地権者立会のもと、土地の境界確定――を要する。

だが近ごろ山林の地権者の高齢化に伴い、現場での境界確定作業が難しくなっている。原木伐採の遅延や森林組合での事務負担が増加傾向にあり、解決手段の一つとして、公的機関の人間が山中で境界付近を動画撮影し、その映像を地権者が即時山麓にて確認することが考えられる。けれども、地籍調査が必要な山中は、携帯電話の電波が届かないところが多く、見通し外通信の限界値が数10mの無線LANも使えない。

見通し外環境での映像伝送実績のあるWi-RAN(広域無線網)システムにおいても、アンテナ目前から生い茂った森林遮蔽による厳しい環境での実証は行われていなかっという。日立国際電気、須崎地区森林組合、高知県商工労働部産業創造課、京都大学、高知県公立大学、STNetは、広域系Wi-RANシステムを用いて、山中から山麓へのリアルタイム映像伝送実験に成功し、地籍調査の新たなソリューションを実証した。