閉経女性のデブ菌によるメタボを改善する効果

東北大学は、ポリフェノールの一種である「プロアントシアニジン」を豊富に含むブドウ種子エキスが、閉経女性のモデルである卵巣摘出マウスにおいて、腸内フローラを改善し、肥満や糖尿病を予防・改善する効果を発揮することを見出したと発表した。

東北大学大学院歯学研究科先端フリーラジカル制御学共同研究講座の菅野 太郎教授、東北大学名誉教授、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科整形外傷外科治療開発学の庭野 吉己寄附講座教授と同整形外傷外科治療開発学の麻生 義則寄附講座准教授のグループが成功。

日本人女性平均寿命は86.99歳(厚生労働省 第22回生命表)に到達し、閉経後も多くの女性は20~40年と長生きする。しかし、閉経は内臓脂肪増加とそれに伴う血糖上昇、いわゆるメタボリックシンドロームのリスクを高めることが知られている。

近年、腸内細菌が、食物の消化活動のみならず、様々な疾患の原因となることが明らかとされてきた。例えば、腸内細菌叢は脂質吸収を制御し、肥満者の腸内細菌を移植されたマウスは、痩身者の腸内細菌を移植されたマウスよりも有意に太る。ファーミキューテス門に属する腸内細菌は、いわゆる「デブ菌」と呼ばれ、腸内細菌叢におけるファーミキューテス門比率の増加は、脂肪吸収効率を増加させて肥満を招く。

閉経は肥満や、耐糖能低下の危険因子。閉経後女性の腹囲は増加し、内臓脂肪の増加に伴い、耐糖能低下が認められ、メタボリックシンドロームの罹患率が増加するが、この現象の背景にある分子メカニズムは十分に解明されていなかった。

研究グループでは、閉経女性のモデルである卵巣摘出マウスでは腸内フローラにおいてデブ菌が増加すること、プロアントシアニジンを多く含むブドウ種子エキスを投与することにより、腸内フローラの変化が抑制され、脂肪蓄積による肥満および血糖調節機能の低下、すなわちメタボ化が予防されることを明らかにした。

今回の研究成果は、2017年12月、2018年2月に科学誌『Journal of Medical and Dental Sciences』と米国科学誌『Journal of Food Science』にそれぞれ受理され、Journal of Food Scienceは4月に、Journal of Medical and Dental Sciencesは6月に掲載された。