白血病発見で知られるウィルヒョウ以来100年以上、形態観察に基づく細胞の分類、分離・分取は人の経験と認識力に基づいて行われてきたが、そのスピード・精度には限界があった。
東京大学 先端科学技術研究センターの太田 禎生准教授、大阪大学 大学院情報科学研究科の堀﨑 遼一助教、東京大学 大学院新領域創成科学研究科/理化学研究所 革新知能統合研究センターの佐藤 一誠講師、シンクサイトの河村 踊子研究員、鵜川 昌士研究員らの研究グループが成功。
研究グループは、新規高速・高感度イメージング技術の開発に際し、「特殊な光構造照明上での対象の『動き』を利用して、対象像を捉える」という新コンセプトで、蛍光など暗い対象も高速で撮影できる単一画素圧縮撮像手法(動的ゴーストイメージング法:Ghost Motion Imaging)を開発した。
また、人を介さない画像解析に画像は必要ない点に着目し、「画像(人が認識するためのデータ形式)を作らずに、単一画素圧縮計測信号を直接機械学習モデルに判別させる」というコンセプトを実装し、シンプルで正確かつ高速なリアルタイムでのイメージングデータ処理法を開発した。
分取技術融合開発に当たっては、シンクサイトを創業し、同社との共同研究を通して、先端マイクロ流体細胞分取技術との融合研究開発・実用化を加速させ、世界初の機械学習駆動型の光流体装置を完成させた。
この技術は、高速で細胞の蛍光イメージを計測して機械学習でリアルタイム解析し、マイクロ流体中での選択的分取を実現している。これにより、人の目でも見分けることが難しい細胞の高精度な分類・分離や、モデル血中からのがん細胞の高速検出・分離を可能にした。
大量の細胞を形態で評価し、選別し、活用することにより、血液・体液診断、再生医療や細胞治療など高い安全性や信頼性の求められる医療に貢献することが期待される。研究成果は、米国の国際科学誌『Science』に2018年6月15日付けで掲載された。