ゲノム中のウイルスを抑制する仕組みを解明、理研

理化学研究所(理研)開拓研究本部眞貝細胞記憶研究室の眞貝洋一主任研究員、福田渓基礎科学特別研究員らの国際共同研究チームは、ウイルスに由来するDNA配列であるレトロエレメントの抑制に関わる新しい遺伝子を発見した。

哺乳動物のゲノムの約半分は、レトロエレメントというウイルスに由来するDNA配列で占められている。レトロウイルスは、DNAからRNAへの転写と、RNAからDNAへの逆転写によって増殖する性質を持つRNAウイルスのこと。レトロエレメントは、逆転写反応によりレトロウイルスが染色体に取り込まれたDNA配列のことを指す。

レトロエレメントの異常な発現は、近傍遺伝子の発現への影響や、転移によるゲノムの損傷を引き起こすため、その発現はエピジェネティック修飾により抑制されている。
エピジェネティック修飾は、DNAやヒストンタンパク質の化学修飾のこと。転写制御やDNA修復、染色体組換えなど、さまざまな生命現象に関わる。エピジェネティック修飾によって制御されるメチル化、アセチル化などの情報をエピゲノムという。しかし、その抑制機構の詳細は明らかではなかった。

今回、国際共同研究チームは、「CRISPR-Cas9システム」を用いた遺伝子ノックアウトスクリーニングにより、50以上もの新しいレトロエレメント抑制因子を同定。それらのうちMORC2AとRESF1の分子機能を解析したところ、MORC2AとRESF1はレトロエレメント抑制機構の異なる段階で働くことが分かり、レトロエレメントの抑制が確立する機構の一端が明らかになった。

研究は、国際科学雑誌『Genome Research』電子版に掲載された。