とある田舎の病院を訪ねたとき、入院病棟の脇からヘリコプターが飛び立った。白い機体に赤のラインが入ったその影は、あっという間に小さくなって遠くの山脈を越えていった。ああ、あれがドクターヘリというものか、と筆者はいつまでも窓際に佇んでいた。
救急医療用の機器などを装備し、医師や看護師が同乗している。ヘリは事故現場などへ急行できることから、救命率の向上や後遺症の軽減に大いに役立つ。日本では特別措置法が施行され、その数は現在52機――。
東日本大震災時には、東北上空に救援機が多数飛来したものの、山を越えると無線通信不可となるために空域調整や運航管理が難しく、現場が混乱したという。ウェザーニューズ社は、強い要望を受けて、その翌年に無線不感地帯でも位置情報を常時把握できる機内持ち込み型の動態管理システム「FOSTER-CoPilot」(紹介資料:国交省サイト)を開発した。
同システムは宮崎県のドクターヘリに初導入されて徐々に各県へ、その後熊本地震などでの実績が認められ、今年5月には佐賀・大分・熊本の3県が加わり、国内の全ドクターヘリで利用されることになった。機体の位置情報は、運航可否判断支援ツール「FOSTER-GA」で気象情報と重ね合わせて表示される。
JAXAのD-NETシステムを使う消防防災ヘリ、「FOSTER-CoPilot」搭載のその他航空機の情報も上記支援ツールで一元監視することにより、大規模災害発生時でも機体位置を網羅的に把握できるという。同社は、ドクターヘリ誕生以来、航空気象コンテンツを提供していて、現在は年間約25,000回の出動の安全運航を支援している。
近い将来に増加するであろう、ドクターヘリと同じ低空域を飛行するドローンについても、「FOSTER-CoPilot」搭載により安全運航の確保、有人機・無人機を網羅的に監視できる運航管理システムの実用化を目指していくという。