風力発電の大量導入で安定供給をめざす、計算モデルを確立

高速道路を西に向かっていると、静岡の山の上に巨大な風車が並んでいる様が見られる。日本の各地で同様の施設が増えていて、地球環境に優しい「再生可能エネルギー」の活用ぶりがうかがえる。取り組みは米国や欧州でいっそう盛んであり、日本でもさらに進むだろう。

風力発電の電力システムへの導入はしかし、天候などによる出力変動の予測不確実性への対処がとても重要だ。その発電出力は、普段は小さな変動幅に留まるものの、突風や乱流の発生などにより無視できない頻度で極めて大きな値(希少事象)が発生する性質がある。この大きく突出した「外れ値」は、電力系統に深刻な障害をもたらす一因であることが指摘されてきたという。

科学技術振興機構はきょう、戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)において、「太陽光発電予測に基づく調和型電力系統制御のためのシステム理論構築」をテーマに、京都大学の研究チームが、風力発電の予測困難な出力変動が電力系統に与える影響を確率的に評価するための理論基盤と、実用的計算手法を世界に先駆けて開発したと発表。

研究チームは、正規分布の拡張概念である「安定分布」を用いて、扱いやすくかつ外れ値を適切に考慮できる新しい「確率的なモデル」(電力系統の時間変化を表現する微分方程式)を構築――。突発的変動の影響をモンテカルロ法のような標本生成を必要とせず少ない計算量で評価できる確率的なモデリング手法を提案し、実際の発電データに基づく数値実験を行い、同手法の有効性を実証した。

風力発電のみならず、外れ値を伴うさまざまなシステムの解析・設計に向けた新技術の理論基盤となる。再生可能エネルギーを軸とする将来の電力システムに対応し、電力の安定供給を実現する新たな技術としてその発展が期待されるものだという。今回の研究成果は、米国電気電子学会の「IEEE Xplore(R)デジタルライブラリ」で速報された。